月刊・経済Trend 2003年8月号 巻頭言

都市再生

平島副議長 平島 治
(ひらしま おさむ)

日本経団連評議員会副議長
大成建設会長

一昨年の小泉内閣発足からほどなく、内閣総理大臣を本部長とする「都市再生本部」が設置された。その目指すところは、20世紀の負の遺産を解消し、わが国の活力の源泉である都市の魅力と国際競争力を高めるため、都市の社会資本整備を集中的に行い、都市再生の実現を図ることである。

民間の力(資金やノウハウ)を都市に振り向け、新たな需要を喚起し、民需を誘導しながら経済再生を実現し、併せて、土地の流動化を通じて不良債権問題の解消に寄与しようというものである。

この二年間、都市再生本部において精力的な作業が進められ、環境や防災、国際化などの観点から都市再生を目指す21世紀型プロジェクトの決定、時間と場所を限定した大胆な措置により民間都市開発投資を促進することをねらいとした緊急整備地域の指定、都市再生ファンドの創設、加えて、全国都市再生のための緊急措置等の総合的な施策が講じられた。その結果、都市再生に向けた環境整備はほぼ完了し、今後は、地方自治体と民間が相互に協力し合い、具現化していくことに重点が置かれることになる。

しかし、解決すべき課題も多い。疲弊している民間の力、都市再生の有力な手法と期待されているPFI(注)のあり方、土地収用法などの関係者の権利調整の問題等。

このところ、汐留、品川、丸の内、六本木と、東京都心で次々と高層ビル群が誕生し、人々の話題をさらっている。が、これらのプロジェクトは、従来の再開発制度で完成したもので、たとえば、六本木ヒルズは、施工区域約11ha、総延床面積約72万4000平方mという大変な規模を誇るが、東京都から「再開発誘導地区」の指定を受けたのが1986年、完成まで実に17年間の膨大な年月を要している。

都市再生本部の真価が問われるのは、これからの都市再生プロジェクトを従来型のような年月を要せずに、いかにして時間リスクを軽減しスムーズに推進できるかであろう。

首都圏に点在する再開発が急がれる密集市街地(約6000ha)のことや、都市再生の根幹を成す環状道路の整備率(約20%)等を考えると、土地収用法のあり方を含めた規制改革を、政府は英断をもって進める必要があるのではないか。


(注)PFI:Private Finance Initiativeの略。民間の資金、経営能力および技術的能力を活用し、行政側の規制緩和、優遇策と併せて公共施設の建設、維持管理、運営などを行う手法。90年代初頭の英国で、公共事業の効率化を目的として導入され、わが国でも、1999年9月にPFI推進法に基づいて実施され、約100件もの事業の実施方針が公表されている。
PFIの活用が広がる一方で、民間の能力や創意工夫が活かせる範囲が限定的で、建設費の単なる延払い、官民の適切なリスク分担、事業者選定方法の多段階選抜等の問題点も指摘されている。

日本語のホームページへ