月刊・経済Trend 2008年8月号 巻頭言

公務員制度改革
― 小さな第一歩

前田副会長 前田晃伸
(まえだ てるのぶ)

日本経団連副会長
みずほフィナンシャルグループ社長

明治以降、日本が近代化し、世界第二位の経済大国に成長する過程で、公務員制度は重要な社会制度と評価されてきた。しかしながら、過度の中央集権と硬直的な制度運営は、社会のニーズ、国民のニーズとの大きな乖離を生み、批判の的になっている。だが、批判だけでは何も変わらない。

民間企業では、社内で問題提起するだけの人より、具体的な解決手法を提言する人を高く評価する。課題は解決されなければ、何も変わらないからだ。

小泉内閣以降、政治主導で郵政民営化を始めとして、官業でなければならない事業以外の民営化、廃止等が初めて大規模にスタートした。構造改革は、初めて官の聖域に及び始めた。一方、国民が全てのコスト負担をしている公務員制度の改革は、これまで遅々として進まなかったが、今国会会期末ギリギリの段階で、与野党が合意し、6月6日に法案が成立した。実効ある改革が実現するまでには、まだ障害も多いが、改革の指針としては、今年2月の「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」改革提言を大切にしてもらいたい。

七つの改革主要項目のうち、私は三番目の「評価の適正化」に注目したい。報告には「評価は、採用年次にとらわれず、同一の職位に属する集団の中での相対評価により行うことで、年次順送りでない能力実績主義に基づく公平・透明な仕組みを確保する」とある。従来の絶対評価を相対評価にすることは、心臓部分であり、大きな意味がある。採用時評価を退職時まで使うことの矛盾は、誰にでもわかることだ。「評価」以外の六つの改革も実現すれば、世間からのいわれなき批判はかなり減少するはずだ。

さらに、道州制の導入による究極の統治方法の構造改革を行えば、難問山積のわが国の将来に対し、官民挙げて取り組むことができる新体制ができ上がるのではなかろうか。体制の見直しと、運営の適正化が解決のkeyである。


日本語のホームページへ