月刊・経済Trend 2008年12月号 巻頭言

国際標準化に挑む人たちにエールを

野間口副議長 野間口 有
(のまくち たもつ)

日本経団連評議員会副議長
三菱電機会長

経済産業省によると、今年の国際標準化機構(ISO)における日本人の国際幹事は58名、国際電気標準会議(IEC)においては15名で、いずれも首位ドイツの半数に満たない。そのドイツの総合電機メーカー・シーメンスでは、売上高の0.1%(約120億円)を国際標準化のために投資しているという。日本企業でも国際標準化の重要性に対する認識は高まりつつあるが、欧米の後塵を拝し、さらには国家を挙げて標準化に取り組む中韓の足音が後ろから聞こえてきている現状を再認識すべきだ。

企業活動のグローバル化が進む中、世界貿易機関(WTO)の加盟国には「貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)」と「政府調達協定」(受諾国のみ)の遵守が義務付けられている。これは、いかに優れた技術・製品であっても、国際標準に合っていなければ国際市場では受け入れられないことを意味する。今や国際標準化とその核となる知的財産への取り組みは企業の生命線だ。そして、その活動を担う人材層の厚薄が企業の国際競争力に直結する時代となっている。

幸い、政府や大学は標準化人材の育成に本腰を入れ始めた。今年の7月には総務省の支援の下、「ICT標準化・知財センター」が設立された。経済産業省や大学では世界に通用する標準専門家の育成を目指した教育プログラムが整備されつつある。産業界においても、専門家はもとより、専門家以外の社員にも標準化教育を実施し、国際標準化の重要性に関する理解を広く浸透させていくことが必要だ。若手社員に早い段階から国際会議に出席する機会を与えることも、問題意識の醸成に有用だろう。

日本経団連では昨年6月より、本誌において14回にわたり国際標準化の最前線で活躍する企業人を紹介してきた。立場や価値観の違い、言語の壁を乗り越えて国際標準を創り上げていく苦労は並大抵でなく、我慢強く、論理立てて説明する能力、各国委員との良好なヒューマンリレーションを築く真摯な姿勢と努力が必要なことを改めて認識させられた。このような国際舞台での活動は社内の人間から見えにくい部分が多いだろう。経営者の皆様にはぜひ、彼らの活動に注目し、より一層のサポートをお願いしたい。


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