月刊・経済Trend 2009年2月号 巻頭言

都市化率を意識した政策の提言

坂根副議長 坂根正弘
(さかね まさひろ)

日本経団連評議員会副議長
小松製作所会長

何事も将来を予測することは難しいが、人口増と都市化の進展は間違いなく世界のトレンドであろう。

人口が増えて、都市化が進むと、電力需要、建設需要等の増加により、石炭や銅そして鉄の需要も増える。既に、われわれは、地球温暖化という大きな課題に国レベルで取り組んでいるが、資源エネルギー、食糧、水の問題も、予想を遥かに超えたスピードで迫ってきている全世界共通の課題である。

先進国の都市化率の定義は多少違うが70〜90%が普通で、発展途上国で現在は50%以下であっても、将来は70%以上と明確な目標を政府として掲げている国もある。それは、この数値がその国の社会・経済効率を表すからである。

わが国で、都市化率について真剣に議論されたことは、私の記憶ではあまりないが、郵政民営化や、道路行政の議論、医療問題への取り組み等どれをとっても、個々の領域の問題ではなく、最終的に、日本という国家をどう再設計すべきか、理想像を描いた上で議論しないと、わずか66%足らずのわが国の都市化率の状況下で議論してもなかなか前に進まないであろう。

道州制の議論が継続されているが、理想モデルを都市化率80%の国とするのか、66%程度の国で良しとするのか、具体的な目標値をもち、それを前提とした郵政民営化、道路行政、医療改革等を推進することで、形だけではなく、実態がついてくる暮らしやすい国づくりの計画的な実現が可能となる。

9月以降、金融危機の影響を世界同時に受け、閉塞感が漂っているが、今のパニックが収まり、経済回復基調に向かう時期を迎えた時、その回復スピードは、国の政策、実行能力によるところが大きいのではないだろうか。

今後、世界の経済は、金融への過剰投資という同じ過ちを繰り返さず、実体経済への地道な投資を促進すべきであり、わが国はリーダシップを発揮し他国に先駆け、自力回復を早期実現させたいものだ。そのためにも、「都市化率を意識した政策」の必要性を提起したいと思う。


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