月刊・経済Trend 2010年5月号 巻頭言

新たな大変革期を迎えて

中村副会長 中村邦夫
(なかむら くにお)

日本経団連副会長
パナソニック会長

私たちはいま、世界の大きな変革期のさなかにある。

政治においては昨年、日米で歴史的な政権交代が実現した。経済では、一昨年のリーマンショックが引き金となった金融危機が、瞬く間に世界同時不況に発展し、いまだ完全回復に至っていない。一方、中国をはじめとする新興国の力が増すにつれて新たな中間層が生まれ、市場が急速に拡大している。これら新興国の力とITを駆使した世界最適オペレーションによって、5000円のスーツや690円のジーンズなど、これまでは考えられないような価格の商品も生まれている。加えて、地球環境問題への意識の高まりによって、かつての産業革命や情報革命に続く「環境産業革命」とも呼ぶべき大変革が起こっている。そのなかであらゆる企業が、地球環境との共存を優先しなければ存続さえ危ぶまれるという状況が生じている。言うまでもなく、こうした一連の流れは、決して一時的なものではない。経済のグローバル化の進展に伴う構造的なものとして、今後もとどまることはないだろう。

いまや、世界中で、国も地域も企業も、そして私たち一人ひとりも、経済のグローバル化の影響を免れることのできるものはない。もちろん企業は、これまでにも増してスピード感を持ち、競争力の強化に自助努力していかなければならない。しかし、その企業の努力を後押しする国や地域の制度・インフラの整備が伴わなければ、競争力の強化は果たせない。実際、法人実効税率を例にとれば、ここ数年で欧州・アジア諸国は軒並み引き下げ、約40%という日本の水準は、世界的に見て突出して高いものとなっている。

グローバルな大変革は今後、さらにスピードとダイナミズムを増していくことになろう。私たちも、自らを日々新たに変革していくことが求められるが、政府には、改めてグローバルな視点とスピード感を持って、企業の競争力強化に資する政策を実行するよう期待したい。


日本語のホームページへ