月刊・経済Trend 2011年4月号

3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、被災された地域の皆様に、謹んでお見舞いを申し上げます。

この未曽有の危機は、国民が力を合わせることで必ずや乗り越えられるものと確信しております。

国民生活の安全・安心を一日も早く確保すべく、経済界としても全力で取り組んでおります。

日本経団連会長
米倉弘昌

巻頭言

国を開く

本格的な人口減少・少子高齢化の時代を迎えた日本は、グローバリゼーションの荒波のなかで、今後どのような経済社会をつくり上げていくのか、一刻も早く明確な将来展望を打ち出していかなければならない状況にある。そのようななか、「環太平洋経済連携協定(TPP)」への参加というチャンスが訪れた。日本が置かれた状況を直視し、世界に打って出るという気概を持ってこの好機をとらえなければならない。いまこそ、「国を開き」、国内の構造改革に踏み出さなければ、将来に禍根を残すことになる。

世界の主要国は、経済危機後の長期的な成長戦略として、経済連携のネットワークの拡大を積極的に推し進めている。先月、今後高い経済成長が期待されるインドとの間で包括的経済連携協定が締結されたことはわが国にとって大きな前進であったが、アジアの隣人、韓国に目を向ければ、すでに米国、EUといった先進経済国・地域と自由貿易協定(FTA)を締結しており、わが国もこうした世界の流れに遅れをとることがあってはならない。

TPPは、日本がかつて提唱した「環太平洋構想」を進化させたものである。自由貿易体制のもとで、これまで大いなる恩恵を受け、今後もその発展を目指す日本にとって、TPPに参加しないという選択肢はない。国内農業の構造改革をはじめ、乗り越えなければならない課題は多いが、より高いレベルの経済連携を推進するとともに、農業にしても製造業にしても、自らの技術に磨きをかけ、競争力を強化することにより、必ずや、日本経済の持続的な発展を実現すると同時に、世界が直面しているさまざまな課題の解決に貢献していくことができる。TPPは、その土台を成すものと認識すべきであろう。

日本は依然として「失われた20年」から立ち直っていないが、私は日本の力を信じている。いまこそ自信を持ってグローバル競争に挑みたい。


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