月刊・経済Trend 2011年8月号 巻頭言

「社会の公器」として使命を果たす

大坪副議長 大坪文雄
(おおつぼ ふみお)

経団連評議員会副議長
パナソニック社長

この度、評議員会副議長を拝命した。微力ながら、出来る限りお役に立てるよう尽力させていただく所存である。

わが国の社会・経済の様相は3月11日を境に一変した。東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞いを申し上げたい。地震発生から5カ月近くが経ったが、復旧・復興への道程はまだまだ遠いと私たちは覚悟しなければならない。

この震災で、企業はサプライチェーンが1カ所でも途切れると事業が滞り、容易に復旧できないことを改めて認識した。また、品質や安全性に対するお客様からの信頼が思いがけなく崩れるリスクも痛感した。想定を一層厳しくして対策を講じるとともに、想定を越えた場合に備えることが極めて重要と思う。柔軟な視点で、改めて全ての拠点の備えを見直す必要を感じている。

この危機的状況に直面して、「社会の公器」として何をするべきか、企業の本質が問われている。被災地への支援とともに、一刻も早く本業を復旧させ、社会が必要とする商品・サービスをお届けすることが企業の最大の役割である。事業を通じた貢献には健全な持続性・発展性があり、被災地が平常さを取り戻す道へとつながるはずである。

特に、注力すべきは環境・エネルギー問題の解決である。震災を踏まえた革新的な取り組みが求められている。「創・蓄・省エネ」機器の普及促進や、それらを効果的にマネジメントする新たな生活スタイルの提案などによって、エネルギー利用の先進モデルを作りあげることは、企業に課せられた使命のひとつと考えている。

日本は、過去にも戦後の復興、オイルショック、円高不況、バブル崩壊など幾多の危機を経験したが、技術とノウハウ、そしてたゆまぬ努力で乗り越えてきた。私たちは今回の困難にも打ち勝つだけの底力があると信じている。今こそ日本中の英知を結集し、この国難ともいえる危機を乗り越えていきたい。そして、私たち産業人がその先頭に立つ存在でありたいと強く思っている。


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