経済くりっぷ No.6 (2002年10月8日)

9月6日/貿易投資委員会(委員長 槙原 稔氏)

わが国が締結している社会保障協定


グローバルな企業活動に伴い、諸外国との社会保障協定の締結を求める声がわが国経済界で高まっている。そこで、貿易投資委員会では提言「社会保障協定の早期締結を求める」前出の提言参照)をまとめるにあたって、外務省の遠藤茂領事移住部審議官よりわが国の社会保障協定の概要について説明をきいた。


○ 遠藤審議官説明要旨

1.社会保障協定の概要

国際化の進展に伴い、企業等による一時的海外派遣者が増加している。永住者を除く長期滞在の在留邦人数は、54万人にも達している(2001年10月現在)。このような状況下、わが国と外国の社会保障制度の相違により、邦人が保険料の二重負担を被る事例が増加している。社会保障協定は、保険料の二重支払いならびに保険料の掛け捨ての問題を解決するためのものである。

2.わが国が締結している社会保障協定

わが国が現在締結している社会保障協定は、日独社会保障協定(2000年2月発効)、日英社会保障協定(2001年2月発効)の2つである。日独社会保障協定は、二重支払いの回避と保険期間の通算を盛り込んだものである。これにより、5年以内の一時派遣であれば、ドイツ年金制度への加入は免除されることとなった。また、年金受給資格期間(日本25年、ドイツ5年)を下回る場合でも、日本とドイツの保険支払い期間を合わせた年数を資格要件年数とすることが可能になった。一方、日英社会保障協定は、二重支払いの回避のみの取り扱いとなっている。

3.現在交渉中の国

現在交渉中の国は、米国、フランス、ベルギー、韓国である。米国とはこれまで協定の案文協議を2回行っている。日本はこれまで公的年金のみの社会保障協定を対象としてきたが、米国は医療保険も対象とする協定を希望しているため交渉は難航しているが、早期締結を目指し努力している。
フランスとは1996年の日仏首脳会談が契機となり、予備協議を経て9月9日より案文協議を開始することとなっている。ベルギーとは、2001年の日ベルギー首脳会談を契機に同年より情報意見交換を開始、9月下旬に第2回情報交換会を東京で行う。韓国とは、2001年に予備協議を開始し、本年6月に第2回予備協議を実施した。

4.今後の課題

社会保障制度は、その国の歴史的沿革を反映したものであり、国によって大きな違いがある。交渉にあたっては、相手国とわが国の社会保障制度の違いを克服していかなければならない難しさがある。
また、国内の法令改正を伴うものであり、膨大な作業が生じるため、相当の人員を充てる必要がある。
日本政府としては、直接投資の環境整備の一環としての社会保障協定の重要性を認識しており、各国の制度、支払額の規模、邦人の数等を踏まえて緊急度の高い国から協定締結を実現していきたいと考えている。

《担当:国際経済本部》

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