経済くりっぷ No.8 (2002年11月12日)

10月17日/第21回評議員懇談会(座長 伊藤助成 評議員会副議長(議長代行))

産業技術の競争力強化、税制改革、公的年金制度改革、規制改革への取組みについて


評議員懇談会を開催し、経済活性化に向けて現下の重要課題である、産業技術の競争力強化、税制抜本改革、公的年金制度改革、および規制改革について、日本経団連の取組みを報告するとともに、出席した評議員とテーマごとに種々懇談した。

I.奥田会長挨拶

  1. 長年にわたり景気回復の足かせとなってきた「経済の低迷と金融システム不安の悪循環」を断ち切ることが、喫緊の課題である。日本経団連では、事業再構築や産業再編の促進、資産デフレの解消と一体となって、不良債権処理を強力に進めるとともに、雇用不安や倒産に伴う混乱を回避するためのセーフティネットを整備・拡充するよう、政府に強く求めている。

  2. 最近の企業不祥事により、当該企業はもとより、経済界全体が社会の強い批判にさらされている。日本経団連では、今般、企業行動委員会において、不祥事防止のための実効ある取組みを検討し、

    1. 企業行動憲章の改定および実行の手引き (PDF) の改訂、
    2. 社内体制の整備に向けた経営トップへの要請、
    3. 日本経団連としての支援策、
    を柱とする対策を取りまとめた。評議員各位には、企業倫理の徹底に率先して取り組んでいただくようお願いしたい。

  3. 現在、日本経団連では、「活力と魅力溢れる日本」を実現していくために必要な「展望」、大切にしたい「価値観」、目標実現に向けた方法・手段としての「行動規範」を、国民が共有していくことができるよう、21世紀の新しい国づくりのためのビジョンを取りまとめつつある。わが国の変革を妨げているさまざまなタブーに大胆に挑戦しながら、政治改革を含め、わが国が直面している諸問題への的確な処方箋を打ち出すことで、多くの国民に読まれ、共感が得られるものにしたい。

II.活動報告

1.産業技術の競争力強化
  庄山 副議長・産業技術委員会共同委員長

わが国企業が、国際競争に打ち勝っていくためには、新しい技術を創造し、付加価値の高い製品やサービスの開発を進めていくことが不可欠である。世界各国は、こうした認識に立ち、国をあげて産業技術の競争力強化に努めているが、近年、わが国政府もその重要性を認識し、総合科学技術会議の設置をはじめ、体制整備を進めている。
同会議では、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の4つを重点分野として研究開発の推進を図るとともに、産学官の連携、知的財産戦略の策定等に取り組んでいる。日本経団連としても、これらの動きに対応し、競争力強化に向けた施策を積極的かつ具体的に提言し、同会議や小泉総理の下に設置された知的財産戦略会議、バイオテクノロジー戦略会議等を通じて、その実現を働きかけている。

2.税制改革への取組み
  関 税制委員会企画部会長

日本経団連では、これまで一貫して、経済活性化に向け税制を活用すべきとの観点から、大規模な先行減税の実施を求めてきた。深刻化するデフレ・スパイラルの中で、従来の財政・金融政策には限界が見えており、税制改革を通じて、経済成長のダイナミズムを生み出していくことが最も重要な課題である。幸い8月に、小泉総理が1兆円を上回る先行減税を行うとの方針を打ち出した。その後、減税規模等をめぐって、さまざまな議論もあったものの、ほぼ日本経団連の主張に沿った展開になっている。
平成15年度税制改正における主要課題は、

  1. 企業競争力の強化に向けた法人の税負担の軽減、
  2. 金融・証券税制の見直し、
  3. 外形標準課税の導入阻止、
  4. デフレ脱却に向けた税制措置、
であり、これらの課題が実現するよう、迅速かつ果敢に対応していく。

3.公的年金制度の改革
  岡本 社会保障委員会年金改革部会長

高度経済成長を背景に整備されてきたわが国の公的年金制度は、急激な環境変化により、制度の前提条件は大きく崩れ、現行制度を維持することが困難な状況にある。
改革の視点としては、現役世代と企業の負担の限界を充分踏まえ、保険料負担に軸足を置いた制度に転換すべきである。まず基礎年金制度については、その役割を老後生活のセーフティネットとして位置づけ、誰もが公正に負担する代わりに同じルールの下で給付を受けられる真の国民皆年金としていくことが求められ、間接税方式で運営することが適切である。一方、報酬比例部分については、基礎年金の上乗せとしての性格を明確にし、現役世代の努力を一定程度反映させる制度として、負担と給付のアンバランスを見直すよう求めていく。こうした改革の視点を踏まえ、中長期的に持続可能な制度構築を働きかけていく。

4.規制改革への取組み
  鈴木 行政改革推進委員会規制改革推進部会長

日本経団連では、今般、会員企業・団体から寄せられた1,000を超える要望を精査、分析し、ビジネスの現場における強いニーズを反映した「2002年度規制改革要望」を取りまとめた。
「要望」は、319項目の個別要望と規制改革に対する基本的な見解からなり、(1)規制改革を産業競争力の強化と民間主導による経済の活性化を図るための政策手段の柱の一つとして位置づけ、(2)総合規制改革会議の充実をはじめとする推進体制の強化を図り、(3)ビジネスの現場からの実需に基づく規制改革と官製市場の改革による民業の拡大に重点的に取り組むことを提言した。併せて、競争監視機能の充実ならびに国民一般の理解促進のための情報提供等、規制改革推進のための基盤整備、政治のリーダーシップの発揮を求めた。日本経団連として、これらの実現に向け、総合規制改革会議等を通じ、関係方面に働きかけていく。

III.評議員から出された主な意見

評議員からは、

  1. 企業は自らが有する特許は資産であるという認識を持つべきであり、国も自国企業が有する特許が諸外国から侵害を受けたときには、当該企業とともに毅然とした態度を取るべきである、
  2. 固定資産税の負担軽減は喫緊の課題であり、また企業の国際競争力の維持・強化を阻害するような環境関連税制の導入には反対である、
  3. 即効性が高く、経済への波及効果も大きいIT投資促進税制の創設を急ぐべきである、
などの意見が出された。

《担当:総務本部》

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