経済くりっぷ No.15 (2003年2月25日)

1月30日/関西会員懇談会

活力と魅力溢れる日本をめざして


日本経団連が本年1月に取りまとめた新ビジョンの実現目標である「活力と魅力溢れる日本をめざして」をテーマに、標記懇談会が大阪市内で開催された。当日は、奥田会長、奥井・片田・森下・香西・西室の各副会長、高原評議員会副議長が出席し、関西地区会員約210名の参加のもと、活発な意見交換が行われた。

I.関西会員側発言要旨

1.事業転換や新規事業の導入にあたって
  長岡正司 グンゼ会長

当社では、戦後60年間に2度にわたる事業転換、新事業の導入を実施してきた。この経験を踏まえ、次のような要望をしたい。

  1. 企業内での事業転換対応を進めるべく、社内転換教育に対する助成があってよい。
  2. 研究開発促進税制やIT投資促進税制の拡充が来年度より実施されるが、特定の範囲に限らず、幅広く利用できる制度にすべきである。
  3. 転換事業を健全な赤字部門として育成強化する上で、連結納税制度は有効であり、付加税を早急に撤廃すべきである。
  4. 今後、導入される減損会計の影響を緩和するために、業種転換や新規事業の導入等に対しては、時限的な軽減措置が必要である。

2.都市再生について−魅力ある街づくり
  鴻池一季 鴻池組会長兼社長

わが国経済の再生のためにも、大阪都市圏の再生を急ぐことが重要である。こうした都市再生、魅力ある街づくりを実現するためには、区、市、府・県といった行政地域の壁を越え、さらに、産学官一体となった取組みが不可欠である。
関西地区では、道路の絶対量が不足するなど、都市活動を支える都市型インフラの整備が不十分であり、都市間競争に勝つためにも、インフラ整備の遅れを解消すべきである。大阪の特性を活かした、活力とアメニティ溢れる社会、環境にやさしい街づくりを進める必要があり、医薬品開発・国際的なバイオ拠点の創出等、先端知的産業育成への取組みが求められる。

3.技術・研究開発の強化に向けて
  才川至孝 新明和工業会長

21世紀において、わが国が工業立国として、東南アジアや中国とものづくりの分野で共存するためには、技術、研究開発の面で先行することが重要である。ところが、わが国の科学技術立国に向けた取組みは、いまだ遅れているといわざるを得ない。
私どもが手掛ける航空機や特殊車、産業機械分野においても、コスト競争が激しくなっており、コスト競争力を持つ新製品の開発スピードが極めて重要である。しかし、自社のみで技術や事業化の評価を行い、開発を進めるべきかどうかを判断するのは、時間もかかる上、難しい作業である。そこで、開発を進めるにあたり、適正な価格で公正にスピードある評価をする公的機関が設置されれば、今まで以上に効率的に開発投資を行うことができる。
また、20〜30代の若い民間研究者に対する国家的な顕彰制度ができれば、研究開発がより一層進むのではないだろうか。

4.水素エネルギーの開発について
  牧野明次 岩谷産業社長

昨年12月に政府に納入され話題となった燃料電池車には水素ガスが使われている。当社では、自動車用と家庭用の両面から水素の供給インフラの整備に関する研究開発に力を入れている。
水素供給ステーションについては、現在、国家プロジェクト「WE−NET」で、大阪と横浜の2ヵ所で実証試験に入っている。今後は、水素ガスが安全に、手軽に入手できるようステーション網を全国に広げていきたい。
また、水素ステーションおよび家庭用定置式燃料電池の開発や事業化を進めていく上で、国や行政による予算措置や思い切った規制緩和が必要である。すでに28項目の規制緩和要望を政府に提出しており、ご理解をお願いしたい。

5.技術立社経営について
  山本英樹 日東電工会長

わが国の経済を再び活性化し、成長軌道に戻すには、個々の企業、特に製造業が活力と自信を取り戻すことが必要である。そのために、競争力のある分野に集中的に開発投資を行い、スピーディに技術開発を進めるべきである。また、事業経営を進めるにあたっては、国に頼ることなく、自己責任経営を行うことが求められる。
2003年度から、恒久税制として実施される研究開発減税による還元分を、製造企業は研究開発費の増額、産学連携、企業間連携、研究開発ベンチャーの育成等に積極的に活用すべきではないか。

6.フロア発言

自由討議において、以下のような意見が出された。

  1. 関西7経済団体は、昨年12月に、「関西産業競争力会議レポート」を公表し、産業競争力強化のための7つの行動計画を定め、時間軸を明確にして具体的に実行している。実現へ向けての力添えをお願いしたい。
  2. 神戸地区では、阪神・淡路大震災からの復興を目指し、わが国初の医療産業クラスターを形成すべく、神戸医療産業構想や先端医療産業特区構想の実現に向けた活動を行っている。引き続き日本経団連と連携し、取り組んでいきたい。
  3. 地域の特色を活かし、また中小企業の革新を図りつつ、わが国全体が力をあわせて競争力を高めていくことが重要である。

II.日本経団連側発言要旨

森下副会長より税制改正をめぐる動向について、西室副会長より社会保障制度改革への取組みについてそれぞれ活動報告があった。また自由討議に際し、森下副会長より新規事業創出に向けた税制の活用、片田副会長より減損会計への対応、奥井副会長より都市再生への取組み、西室副会長より技術・研究開発の重要性、高原副議長より規制改革や構造改革特区を通じた産業活性化について、それぞれ発言があった。
最後に、奥田会長より、関西におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、「活力と魅力溢れる日本」の実現に向けて積極的に取り組んでいくとの総括があった。

《担当:関西事務所》

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