経済くりっぷ No.18 (2003年4月8日)

3月11日/評議員懇談会(座長 伊藤助成 評議員会副議長(議長代行))

株式市場活性化、規制改革、都市再生、産学官連携
およびODA改革への取組みについて


評議員懇談会を開催し、現下の重要課題である、株式市場の活性化、規制改革や都市再生の推進、産学官連携の促進、およびODA改革の推進について、日本経団連の取組みを報告するとともに、出席した評議員とテーマごとに種々懇談した。

I.奥田会長挨拶要旨

  1. 日本経済が長期の低迷から脱するためには、国民や企業に安心を約束しながら、活力を引き出し、新たな日本を創造していくことが不可欠である。経済構造改革とともに、経済・社会システムの変革を進めていかなければならない。

  2. 経済構造改革については、法人税の実効税率の引き下げを中心とした税制改革、ならびに規制改革等、企業の国際競争力を強化していくための環境整備が重要である。また、雇用面では、今後の春季労使交渉について、従来の春闘から、労使間で賃金水準や賃金制度、社会保障制度のあり方等を幅広く協議し、「共感と信頼」を醸成していくための場へと転換していくことが重要である。

  3. 経済・社会システムの変革については、本年1月に公表したビジョン「活力と魅力溢れる日本をめざして」で指摘したように、経済的な豊かさと精神的な豊かさのバランスのとれた国家を「多様性」や「共感と信頼」をベースに実現していくことが重要である。日本経団連としては、この新ビジョンの実現に向けた活動を強力に展開するとともに、経済構造改革を進め、民間が真に活力を発揮できる経済・社会システムを実現していく。

II.活動報告要旨

1.株式市場の活性化
  −伊藤 評議員会副議長(議長代行)

  1. 現在の日本の株式市場は日経平均で見るとバブル期から約80%下落し、自信と元気を喪失している状況にある。また株主構造も大きく変化し、主に外国人投資家の割合が増加したが、彼らは世界情勢に左右されやすい。結局、株式市場の安定のためには、個人投資家の出番を待つしかない。しかしながら、日本の個人金融資産に占める株式の割合は先進諸国に比べて低く、個人投資家を増やすためには、貯蓄優遇から投資優遇への政策転換等が必要である。

  2. 現在、企業として行うべきことの一つに、自社株買いがある。本年2月末時点で、全上場企業に占める株価純資産倍率(PBR)1倍割れ企業の割合は約7割を数え、今こそ自社株買いの好機である。ただし、日本では、自社株買いに関し株主総会の決議を要する、買付に関するセーフハーバールールが設定されていない等、弾力的に行いにくい面があり、早急に見直す必要がある。

2.産学官連携推進に向けた取組み
  −谷口 宇宙開発利用推進会議会長

  1. 現在、わが国では産学官連携の気運はかなりの盛り上がりを見せており、共同研究、委託研究、人事交流等さまざまな形での連携が進んでいる。しかしながら、いかに優れた制度が整備されても、これを有効に活用できるかは人材にかかっており、大学等で創出された「知」を産業化・事業化に結びつける産業技術人材の育成が急がれる。

  2. 産学官連携の一環として、宇宙の産業化に向けた具体的な連携活動が求められている。昨年、日本経団連の働きかけもあって、宇宙の産業化が明確に政府方針として示されたものの、政府と民間の密接な連携がなければ、国際競争力のある宇宙産業の創出にはつながらない。また宇宙以外の分野でも、産学官の役割分担、契約や資金分担のあり方等、産学官が互いの立場を理解しつつ、相互のメリットになるような連携体制を構築する必要がある。

3.規制改革をめぐる最近の動向
  −高原 評議員会副議長

  1. 経済社会の構造改革を断行し、産業競争力の強化と経済の活性化を図る上で、規制改革を通じた民間活力の発揮は不可欠であり、日本経団連では総合規制改革会議をはじめ関係方面にその実現を求めてきた。また規制改革に取り組む体制の強化策として、総合規制改革会議と経済財政諮問会議との連携強化を主張し、その実現に努めてきた。今後も、政府内の改革勢力と密接に連携しながら、規制改革の実現に取り組んでいく。

  2. 地域主導による経済活性化策として、また規制改革の突破口として注目を集めている構造改革特区については、日本経団連として早い段階から実りある実現を後押ししてきた。ただし、本来、規制改革は全国で実施してこそ、経済効果を発揮するものであり、今後は特区で実現した規制の特例措置をできるだけ早期に全国に展開することが重要である。

4.都市再生とPFIの推進
  −今村 評議員会副議長

  1. 日本経団連では、都市再生を図ることが、わが国経済の再生にも寄与すると主張し、そのための施策を強化すべきと訴えてきた。その結果、現在に至るまで5回にわたる都市再生プロジェクトが決定され、予算の重点配分等が実施された。また、都市再生における民間の力を最大限に発揮させるとの観点から、都市再生特別措置法の成立に向けて取り組み、その成立をみた。

  2. PFIの推進にあたっては、民間事業者の能力や創意工夫が十分に発揮できるよう、官民のリスク分担の明確化等、本来の趣旨に沿った事業を推進すべきことを一貫して主張してきた。現在、数の上ではかなり普及したが、中には本来の趣旨を十分に活かした事業内容になっていない案件も見受けられるため、日本経団連ではその問題点を整理し、PFIの特性を活かした「より質の高いPFI事業」の実現に取り組んでいる。

5.国際協力への取組み
  −西岡 国際協力委員会共同委員長

  1. 昨今の厳しい財政事情を受け、わが国のODA予算は減少傾向にある中、日本経団連では、国益を念頭においた理念の明確化、政策の一元化を目指した組織改革の断行、開発ニーズにあった援助、官民連携の推進等を主張し、一部は実現に至っている。

  2. 現在、政府ではわが国のODA政策の基本文書である政府開発援助大綱(ODA大綱)の見直し作業を行っている。日本経団連では、わが国の国益を意識したODAとすべく、

    1. アジア地域への重点化、
    2. 要請主義の見直し、
    3. タイド援助によるわが国の技術・人材の活用、
    等を中心に働きかけていく。

《担当:総務本部》

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