11月6日/産業問題委員会・雇用委員会合同会合(司会 香西昭夫副会長)

外国人の受け入れ問題を巡り意見交換

−千葉大学 手塚教授よりきく


Introduction
日本経団連では、本年1月公表された新ビジョン『活力と魅力溢れる日本をめざして』において取り上げられた外国人の受け入れ問題について、さる11月14日、「中間とりまとめ」(ポイントは下記を参照)を公表したが、それに先立ち、産業問題委員会と雇用委員会の合同会合に千葉大学法経学部の手塚和彰教授を招き「外国人労働者問題の解決に向けて」と題して話をきいた。

手塚教授説明要旨

1.オランダ、ドイツなどでの経験

1970年代、オランダでは外国人を受け入れ、経済の活性化につなげたが、その際、(1)受け入れた外国人に就労先で所得があること、(2)住宅を確保していること、(3)子供を就学させていること、の3点を条件とした。またパートでも同一労働同一賃金の原則を設け、これがEU全体の指針につながっている。日本で本格的に外国人を受け入れる場合にもこれらは絶対条件とすべきである。
一方ドイツでもトルコ人などの受け入れを行ったが、進展する少子化の影響を緩和することにはならなかった。なぜなら外国人でも多子は第一世代に限られ、次の世代はドイツ人家庭と同様に少子化しているからである。少子化対策として外国人を受け入れることは無意味であると考えられよう。

2.日系人を巡る問題

日本では、1990年の入管法改正により、ブラジル、ペルーなどから日系人が就労目的で日本に入ってきたが、彼らは外国人の受け入れということではなく、海外に住む日本人の受け入れという理解がされている。彼らは、自動車、電機関連の下請け企業において安い賃金で短期間就労するケースが大半であり、その結果、生活は苦しく、社会保険の未加入とそれに伴う医療問題、子女の不就学、コミュニティとの摩擦など彼らが集住する都市での負担が増大するという事態を招いている。
社会的統合という観点から、彼らに日本の社会やシステムを理解し適応させるようにすることが何よりも重要である。

3.外国人受け入れの基本的方向

近年、大量生産型の製造業の生産拠点が日本から海外に移転している。そうした中で、非専門的分野(未熟練、半熟練)の外国人の受け入れは、今後の産業構造の変化を見極めた上で判断することが必要である。
一方で、専門的分野における外国人について日本政府は、すでに「受け入れをより積極的に推進」する方針を決定しているが、実際に具体的な政策は講じられていない。IT技術者の受け入れについても米国やドイツに遅れをとってしまった。今後は規制緩和と企業における処遇改善が求められる。

4.法制度面の整備と行政システムの確立

外国人の受け入れに当たっては、以下のとおり、法制度、行政のシステムを整備することが必要である。
まず、入管法と雇用関連諸法との連携を図る必要がある。また、ある種の雇用許可制度の導入を図るべきである。雇用主が労働条件を守り、また外国人の側にも社会保険・労働保険加入を義務付ける一種のグリーンペーパーとして外国人労働者手帳制度を設けてはどうか。なお外国人雇用税の導入は必要ないと考えられる。さらに、短期的在留を前提とせず、また帰国促進策は効果がないことを念頭におき、子女のみならず成人に対する教育をしっかり行う必要がある。
統一的な行政システムを確立することも重要であり、査証と外国人登録の連動、雇用許可、社会保険・労働保険の集約とそのフォロー、外国人登録と在留資格の連動などが行えるようにすべきであろう。


【ご参考】「外国人受け入れ問題に関する中間とりまとめ」のポイント

I.共通する重要課題の整理

1.国における整合性ある施策の推進
2.就労管理における国と企業の役割
3.日本企業における雇用契約、人事制度の改革
4.日系人の入国、就労に伴う課題の解決
5.外国人の生活環境の整備
6.不法滞在者・治安対策の強化

II.具体的な提案

1.専門的・技術的分野における受け入れの円滑化
2.留学生の受け入れ拡大と日本国内における就職促進
3.外国人研修・技能実習制度の改善
《担当:社会本部》

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