12月18日/日本経団連評議員会

坂本剛二 経済産業副大臣

来賓挨拶

日本経済の本格的な再生に向けて

坂本剛二 経済産業副大臣(中川経済産業大臣代理)


日本経済は、大企業を中心に、一部に明るい兆しが見えつつあるが、一方、失業率は依然として高止まりしており、中小企業や地域経済は引き続き厳しい状況が続いている。明るい兆しが見えつつある今を、雇用や地域経済を含む、本格的な景気回復に向けた正念場として捉え、経済活性化に向けて総力をあげて取り組んでいく。

まず産業の資金需要が高まりつつある中で、中小企業や地域産業をはじめ、経済の隅々まで資金が行き渡るよう、産業金融の機能強化に取り組む。特に金融機関の融資、とりわけ不動産担保や保証人に過度に依存している現状を改め、多様な資金の流れを整備するとともに、リスク対応への多様化等に取り組んでいく。

また、日本の将来を担う若者の雇用情勢は、失業率が全体の約2倍の9.2%である等、深刻な状況にあり、このまま放置するならば、わが国の発展基盤を弱体化しかねない。経済産業省として、若者の就業機会の拡大に全力で取り組む所存であるが、人材育成は官民あげて取り組むことが成功の鍵であり、日本経団連をはじめ産業界の理解と協力をお願いしたい。

さらに日本経済の活性化には、産業事業の再生、創業・起業が不可欠であり、これまでも経済産業省としては、民間の力を引き出すような施策に注力してきた。2003年は研究開発税制の強化、IT投資減税の創設等、思い切った減税を実現し、企業の設備投資等を後押ししてきた。また、産業活力再生法を抜本的に改正し、企業の共同事業の再編や先進的な設備投資等に対して積極的に支援してきた。さらに、新たな起業を促進するため、資本金1円でも起業を可能とする中小企業挑戦支援法を施行したところである。

経済のグローバル化が進展する中、日本が国際競争に勝ち抜くためには、戦略的な対外経済政策を展開することが必要である。具体的には、アジア諸国を中心とした経済連携協定の締結等、東アジア全域を自由で円滑なビジネスの場とする“東アジアビジネス圏”の形成に向けて、全力で取り組んでいく。

加えて、エネルギー・環境政策を取り巻く状況も大きく変化している。不安定な中東情勢や、今年夏の電力需給問題をきっかけとした供給信頼性への関心の高まり、地球温暖化問題への動向等を踏まえ、2004年6月を目途に、長期エネルギー需給見通しを見直し、経済と環境の両立という視点に立って施策展開を図っていく。

日本の経済・産業は、世界的な産業再編の進展や中国、韓国等の成長を背景として、厳しい国際競争環境に置かれている。昨今、わが国の競争力の低下が指摘されているが、日本が誇るべき人的資産を活用し、官と民の力を結集すれば、わが国の潜在的な競争力は再び世界を席捲するものに足りると確信している。このような力を十分に発揮していくためには、新産業の創造等に向け方向性を示すことが重要であるとの認識のもと、経済産業省としても、日本経済の本格的な再生に向け、全力をあげて取り組む所存である。


くりっぷ No.36 目次日本語のホームページ