12月18日/日本経団連評議員会

スティブン・ゴマソール 駐日英国大使

来賓講演

今後の日英関係と日本への期待

スティブン・ゴマソール 駐日英国大使


英国と欧州にとって、日本はアジアにおいて志を同じくするパートナーである。日本は技術的にも経済的にも力を持ち、アジア域内でリーダーシップを発揮しうる可能性を持った国である。この潜在能力を、英国としては、ぜひ発揮してもらいたいと考えている。

これまで日英両国は友好の歴史を築いてきた。また今後とも、安定し繁栄した国際社会を構築していくために、両国は地球温暖化問題等の解決に向け、各国の先頭に立って努力していかなければならない。これまで対外政策や安全保障政策については、両国の間で活発に議論されることはなかったが、北朝鮮、イラク、同時多発テロ等、国際的な平和と安定に対する新たな脅威を受け、日英関係はより緊密なものとなり、英国の対外政策が同じ価値観によって裏付けられることとなった。英国は日本を国際的な安全保障を達成するために不可欠なパートナーとしてみている。

安全保障問題に関しては、イラクの話を避けて通るわけにはいかない。マスコミの報道はテロや破壊活動等が中心であるが、これは全体を捉えたものではない。実際には、大学を含む学校教育、医療等の基本的なサービスは回復しており、裁判所等司法も機能している。そして2004年7月までにイラク人に主権を返還すべく、政治的な改革も進んでいる。英国は今般日本がイラクに対する支援を決めたことを高く評価しており、今後はイラク南部における復興事業に日英が協力することになろう。

日英両国の繁栄は、両国の主要な貿易国のみならず、全世界の発展と安定に大きく寄与している。日本の新しいODA大綱ではこの点をはっきりと認識しており、今後、日英両国はこれらに盛り込まれた言葉を実行に移す責任を負っている。英国は、日本政府が現在のODAの水準を2004年以降も維持することを期待しているが、その見直しが必要であることも理解している。ただ、ODAは義務ではなく、より安全な世界を築くための投資であり、日本企業にとってもメリットとなることを認識する必要がある。

その一方で引き続き、グローバルな自由貿易体制を構築していく必要がある。日英両国は双方の主たる貿易圏において、それぞれの自国市場へのアクセスの拡大という形で途上国に対する責任を果たさなければならない。先のカンクン閣僚会議は結果として失敗に終わったが、このプロセスをまた元の軌道に戻すためには、日本を含むすべての参加国は農業分野における問題を解決していく必要があるだろう。

われわれは、企業業績の改善や消費者心理の改善等からみて、日本経済の今後を楽観的に見ているが、外需依存による景気回復、また巨額の不良債権や規制による高コスト構造等、懸念材料があることも認識している。日本企業と同様、外資系企業も、企業を取り巻く環境の変化には大きな関心を持っており、日本経済の活性化は自国のみならず世界の繁栄、安定につながっていくとの観点から、日本に対しては、一層の規制緩和、地方分権の推進等を期待したい。


くりっぷ No.36 目次日本語のホームページ