3月29日/評議員懇談会(座長 森下洋一 評議員会議長)

政治への取り組み、独占禁止法改正への対応、規制改革の推進、科学技術およびエンターテインメント産業の振興について


Introduction
評議員懇談会を開催し、現下の重要課題である、政治への取り組み、独占禁止法改正への対応、規制改革の推進、わが国科学技術の振興、エンターテインメント産業の振興について、日本経団連の最近の活動を報告した。

I.奥田会長挨拶要旨

  1. わが国経済は着実な回復軌道にあるものの、業種や地域による業況感の格差は大きく、全体としてバランスの取れた成長を実現するには一段の努力を要する。われわれ経営者としては、競争力の源泉である技術革新のダイナミズムを一層高めなければならないが、そのためには、官主導の経済社会を民主導・自律型に速やかに改革していく必要がある。

  2. わが国企業が国際競争力を維持、強化していく上で、社会保険料や法人税など、企業の公的負担の抑制が不可欠である。また、企業が創意工夫を活かした活動を自由に展開していく上で、規制改革の推進、経済法規の整備も引き続き重要な課題である。
    一方、自由な活動は同時に大きな責任を伴うことを企業は深く自覚しなければならない。評議員各位には、企業行動憲章を参照いただき、社内における倫理観の高揚と体制のチェックをお願いしたい。

  3. 国際関係では、円滑な貿易、投資活動を確保する上で、経済連携協定の一層の推進が求められる。今後は、農業の構造改革や官邸主導による交渉体制の整備など、経済連携協定を推進していく上での課題を解決すべく活動を強化していく。

II.活動報告要旨

1.政治への取り組み
宮原 副会長/政治・企業委員長

  1. 日本経団連では、昨年1月の新ビジョンで、企業が活力を発揮できるインフラ整備のため、政治に対して積極的に提言するとともに、政党の政策立案・推進能力を強化する観点から、資金面からも応分の貢献をするとの方針を発表した。

  2. この具体化に向け、政治・企業委員会、政経行動委員会などにおいて検討を進め、昨年末には会員企業が自発的に政治寄付を行うことを確認するとともに、本年1月に、企業が寄付先の政党を判断する際の参考となる政党の第1次政策評価を公表した。

  3. 日本経団連では、政策本位の政治の実現に向けた寄付は「企業の社会的責任の一端であり、重要な社会貢献である」と考えている。評議員各位には、この認識を共有していただくよう、お願いしたい。

2.わが国の科学技術の振興に向けて
西岡 副会長/防衛生産委員長

  1. わが国の科学技術政策は、科学技術基本計画に基づき推進されているが、2004年度は、第2期計画の4年目にあたり、現計画の評価や次期計画の策定に向けた議論が開始される。経済界としても、熾烈な国際競争の進展や少子高齢化、アジア諸国の著しい成長といった環境変化を踏まえつつ、適宜意見を述べていく必要がある。

  2. 宇宙・防衛分野は、わが国では他の科学技術と異なる特別な分野としてとらえられがちであるが、本来、この分野での技術は一国の基幹技術となるものである。国民の安全・安心の確保の観点はもとより、先進国の一員としても、宇宙・防衛の分野での国際的な協力を進めていく必要がある。

3.独占禁止法改正の動向
小林 経済法規委員会共同委員長

  1. 公正取引委員会は、今国会に、独占禁止法改正法案を提出することを目標に、精力的に活動しているが、肝心な法案の中身については、未だに課徴金引上げの根拠や具体的な制度設計をはじめ、多くの問題が残されている。これらの問題を放置したまま、課徴金の強化のみを行う拙速な法改正は、そもそも今回の改正の出発点である「措置体系全体について抜本的に見直す」との国会の附帯決議の趣旨に反するものであり、経済界としては到底受け入れられない。

  2. 日本経団連では、独禁法違反行為をなくすために、措置体系全体の見直しについて、国民が納得いくよう、オープンな議論がなされた上での法改正とすることを求めている。

4.規制改革の推進に関する最近の取り組み
草刈 行政改革推進委員会共同委員長

日本経団連では、昨年10月に会員企業の実需に基づく約300にのぼる個別要望の実現、および2004年3月末に設置期限を迎える総合規制改革会議の後継機関のあり方などについて提言した。その結果、税務書類の電子保存範囲の拡大、燃料電池の普及を促すための緩和措置などが講じられるとともに、総合規制改革会議の後継機関については、政治のリーダシップの発揮と企業経営者の知見を活用した規制改革推進体制の一層の充実を図るべく、規制改革・民間開放推進会議が設置されることとなった。新たな推進体制の下で検討される課題としては、(1)社会的規制の改革・官製市場の開放、(2)経済的規制の改革、(3)公共施設・サービスの民間開放、(4)構造改革特区との連携、(5)規制改革の評価、などが想定される。

5.エンターテインメント産業の振興に向けて
依田 産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会長

  1. コンテンツ産業は、映画、音楽、文芸、マンガ、アニメーション、ゲーム、テレビ放送、出版、玩具など多岐にわたり、エンターテインメント系の事業だけでも約11兆円、雇用者は137万人にのぼるといわれている。今後はネットワーク配信関連事業の発展に伴い、更なる成長が期待される。

  2. 日本経団連では、業界横断的な議論の場を設置し、コンテンツ産業がわが国経済を牽引しうる大きな産業分野として成長するための諸施策、環境整備などの検討を進め、先般、提言を取りまとめた。その結果、コンテンツ産業振興の気運が急速に盛り上がり、コンテンツ産業振興に向けた基本法が議員立法として国会に提出されるに至った。また、知的財産推進計画の改訂に際して、製造業を中心とした知的財産の創造、保護、活用とコンテンツビジネスの飛躍的拡大を掲げ、関係方面に働きかけた結果、知的財産推進本部をはじめ関係府省において具体的な施策として実現されることとなった。

《担当:総務本部》

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