4月20日/共同声明

「国際会計基準に関する共同声明」を公表


日本経団連では、4月20日、欧州産業連盟(UNICE)と共同で取りまとめた「国際会計基準に関する共同声明」を発表した。以下はその経緯および本文である。

I.経緯と今後の取り組み

昨今、資本市場を通じた資金移動のグローバル化や、経済取引の多様化・高度化に伴い、企業が作成する財務諸表の比較可能性を確保しつつ、国際的に通用する単一の会計基準を整備することが急務となっている。
特に欧州では、国際会計基準審議会(IASB)の策定する国際財務報告基準(IFRS)/国際会計基準(IAS)の採用を、2005年以降に上場企業に義務付けることが決定されるなど、世界の会計基準の統一化を指向するIASBの動向が世界中で注目されており、その影響が各方面に波及している。
そのため、わが国経済界としては、国内外の会計基準整備に対する考え方や将来的に求めるべき方向性等についてのスタンスを明確にした上で、国内の政府機関、市場関係者はもとより、欧米・アジア各国の官民との連携も視野に入れて、IASBに戦略的に対応していくことが必要であると考え、昨年10月に意見書「会計基準に関する国際的協調を求める」を公表した。
その後、国内外の市場関係者に対し、本意見書を用いて積極的に働きかけを行った結果、欧州経済界を代表する欧州産業連盟(UNICE)と、双方で協力してIASB等の動きに対処していく必要があるとの認識で一致した。そこで、今般、会計基準の国際的協調の必要性を訴えるとともに、日欧両経済界が共有する懸念を表明するため、共同で提言をまとめた。
日欧の経済団体が、このような基本的な問題で合意をみたことは重要であり、この共同声明をもとに、今後、国内では、金融庁、外務省、経済産業省、日本公認会計士協会、東京証券取引所等に、また、海外では、欧州委員会(EC)、英国金融サービス機構(FSA)等の欧州各国当局、IASB、各国経済団体等に対して、提言の実現に向けて働きかける予定である。

II.UNICEとの関係

UNICEは、欧州委員会創設に際し、欧州連合(EU)各国産業界の意見調整を目的に、1958年に設立された経済団体(本拠はブラッセル)である。会員構成としては、中東欧諸国・トルコを含む欧州29ヵ国の36の主要な産業団体および経営者連盟により構成されており、現在の会長はシュトルーベBASF(ドイツの大手化学工業会社)会長が務めている。最近の日本経団連との関係としては、豊田会長(1995年)、今井会長(1999年)、奥田会長(2003年)の訪欧時にそれぞれ懇談しているほか、2003年9月には、WTOカンクン閣僚会議に向けた経済界の共同提言を他団体とともに公表するなど、これまでも密接に連携してきている。

III.共同声明の内容

1.会計基準に関する基本的概念

IASBで現在進められている会計基準の検討は、現行基準の基本的概念の大幅な変更につながりかねないが、こうした変更は、財務諸表作成者、利用者、監査人、市場監視当局からの明確なニーズに裏打ちされたものではない。
特に、「業績報告(包括利益報告)」、「金融商品の全面時価会計」、「退職給付会計の見直し」等において、IASBに全面時価主義を採用する意図が見られることを懸念している。
利用者や作成者のニーズや、根本的な概念の変更に伴う経済的影響を精査することなく、全面時価主義的な考え方を採ることには、理論面および実践面での問題もはらんでおり、経済界は、断固として反対する。
基準設定にあたって、IASBは市場参加者の声に耳を傾けるべきである。

2.国際会計基準審議会(IASB)のガバナンスの改善
  (国際会計基準委員会財団(IASC Foundation)の見直し)

現時点において、作成者のみならず、監査人、財務諸表利用者、政治家を含めた世界中が、IASBに対する不満を表明している。
IASBが真の国際組織として認知されるためには、そのガバナンスを改善し、会計基準作成にあたっての検討プロセスを見直す必要がある。具体的には、IASBが作成した基準が各市場で受け容れられるために、市場関係者の意見を適切にくみ上げる体制の構築が不可欠である。
IASBの運営母体である国際会計基準委員会財団(IASCF)においては、2004年2月11日を締切として、運営規則である定款の見直しに関するパブリック・コメントを募集していた。われわれは、その改善にあたって有用な貢献を行い、IASBが国際機関たるにふさわしい組織となるよう、定款の見直しに対してもコメントを提出した。IASCFにおいては、これらに沿った形で定款変更が行われることを強く望む。

3.会計基準の相互承認の必要性

資本市場のグローバル化を踏まえると、財務諸表の比較可能性を確保するために、会計基準を収斂させることには全面的に賛成する。
一方、国・地域毎に異なる市場構造や会計基準を取り巻く法規制等を前提とすれば、2005年までの短期間にこれを達成することは困難である。
国際的な単一の会計基準を共有するという目的を達成するために、欧州と日本は、公共の利益に資する国際的な会計基準の策定に努力すべきであるが、現状を踏まえ、収斂を達成する前の中間的段階として、相互承認の実現に向けて協力する。

以上

《担当:経済本部》

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