経団連意見 /12月27日

規制緩和の実現に向けて村山総理大臣の一層の指導力発揮を求める


経団連では、「脱規制社会」の実現をめざし、規制緩和をはじめとする行政改革の推進を活動の最重要課題に掲げて、この問題に取り組んでいる。豊田会長は、規制緩和問題に対する総理大臣の一層の指導力の発揮を求めるため、12月27日に村山総理大臣を訪問し、標記意見書を手渡した。以下はその全文である。

村山総理におかれては、行政改革を内閣の最優先課題に掲げ、その実現に日頃よりご尽力いただき心から感謝申し上げます。
去る12月25日には行革大綱、地方分権大綱を閣議決定されましたが、規制緩和、特殊法人改革、地方分権等はいずれも行政改革を推進する上で不可欠の課題であり、その着実な実施のため総理が陣頭指揮に当たられることをお願い申し上げたいと存じます。
とりわけ規制緩和の推進は、行政改革の基本であり、わが国の将来を開く鍵であると同時に、海外諸国も強く望んでいるところであります。来る日米首脳会談を実りあるものとし、内外の信頼を深めるためにも、総理が指導力を発揮され、下記の事項を実現し、実効ある規制緩和推進計画を策定されるようお願い申し上げます。

【記】

  1. 既往の規制緩和方策等を早期に実施していただきたい。
  2. 既に1993年9月以降、約1,100事項の規制緩和方策を決定されています。今般の行革大綱では、この早期実施のための3指針を示されましたが、この指針が徹底されますよう、総理大臣が行政各部の指揮監督に努められることをお願い申し上げます。
    併せて、本年2月の行革大綱にある、個別法による独禁法の適用除外カルテル等制度(28法律47制度)、再販指定品目(26品目)に関する決定についても上記指針と同様の方向で対処されるようお願い申し上げます。

  3. 新規項目を積極的に盛り込んでいただきたい。
  4. 当会では、11月17日に、既往の規制緩和方策の着実な実施を含め、19分野456項目の規制緩和要望を提出いたしております。規制緩和推進計画の策定においては、これらの要望を全て採用されるとともに、内外各界から寄せられている規制緩和要望も幅広く盛り込み、計画対象期間内に経済的規制を少なくとも半減されるようお願い申し上げます。

  5. 規制緩和検討委員会を活用していただきたい。
  6. 今般、民間人が参画する標記委員会を設置いただき誠にありがとうございました。総理大臣をはじめ閣僚の方々におかれましては折角の審議が官主導となって形式的なものとならないようご配慮いただくとともに、検討結果を尊重いただきますようお願い申し上げます。当会としても、標記委員会が民間要望を十分、反映した検討結果を取りまとめることができるよう、最大限ご協力申し上げていく所存でございます。


《参考》

規制緩和による具体的な効果(例)

  1. 自動車・携帯電話機の売り切り制の導入による需要創出効果
    自動車・携帯電話は、従来、電話機をレンタルする方式がとられていたが、94年4月の規制緩和により、売り切り制が導入された。これをきっかけに電話機の種類が増えたことに加え、通話料金が引下げられたこともあり、加入者が急増しており、94年度は93年度の3.7倍の加入台数が見込まれている。

  2. 米穀小売販売に係る名義借り料の削減によるコスト削減効果
    米穀小売販売業の許可にあたっては、需給調整の視点から人口基準が設けられていることから、新規参入が極めて困難である。 そのため、スーパー、コンビニエンス・ストア等で新規に米を販売する場合、既存の小売店から名義を借りて営業することが常態化している。日本チェーンストア協会の調査によれば、名義借り料は、協会会員店舗合計で約23億円に上る。今回の新食糧法への移行に伴い人口基準が廃止されることにより、約23億円の名義借り料が不要となり、消費者に還元することができる。

  3. 大店法の規制緩和による効果
    94年5月、大規模小売店舗に係る閉店時刻の届出不要基準が緩和されたことにより、スーパー、百貨店等では営業時間が午後8時まで延長できるようになった。これにより、働く女性を中心に仕事帰りの買い物客が増えており、消費者の利便性が著しく向上した。

  4. 建築基準法の緩和による木造3階建て共同住宅の建設
    従来、木造3階建て共同住宅は建設できなかったが、92年の建築基準法の改正により、防火・準防火地域以外の地域において、一定の防火性能を有するものについては木造3階建共同住宅の建築が可能となった。この結果、94年2月末現在、木造3階建共同住宅の建築は148件1,692戸にのぼり、土地の有効活用が図られている。

*経団連の試算「規制緩和の経済効果に関する分析と雇用対策」によれば、規制緩和によって、向こう6年間で74万人の雇用増加、177兆円の実質GNPの増加が見込まれる。

94年度に経団連が提出した行政改革・規制緩和関係の提言一覧

94年11月17日に提言した経団連の規制緩和に対する具体的な要望事項(19分野456項目)の主な例

  1. 運輸分野
    車検制度の見直し、旅客鉄道事業の運賃・料金決定方法の見直し

  2. 流通分野
    大店法の段階的廃止、たばこの小売価格の自由化

  3. 農業分野
    新食糧法の適正運用(出荷取扱業、販売業への新規参入の促進等)
    価格支持制度の見直し(小麦、乳製品、豚肉等)

  4. 通商分野
    自動車部品関税の完全撤廃、輸出管理関連規制の行政手続法適用除外の廃止

  5. 競争政策分野
    純粋持株会社の解禁、金融会社の株式保有の制限の廃止

  6. 公共入札
    公共入札の参加資格申請手続きの簡略化・統一化、地方自治体の納入指定業者制度の廃止

  7. エネルギー分野
    サービス・ステーションのセルフ化の検討、コージェネレーションの許認可申請等の簡素化

  8. 金融・保険分野
    郵貯・簡保等公的金融の見直し、金融機関の店舗設置に関する規制の緩和、年金資産運用規制の緩和

  9. 証券分野
    時価発行増資、店頭登録、CP発行に係わる規制緩和

  10. 公益法人分野
    官主導による公益法人の設立抑制、民間公益法人の設立許可の簡素化

  11. その他
    土地・住宅分野、保安・安全分野、環境廃棄物分野、情報通信分野、国際金融分野、税制分野、統計分野、経済法規・会計分野、技術開発分野

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