訪ASEAN(第1次)ベトナム・ミッション(団長 豊田会長)/2月16〜26日

シンガポール、タイ、ベトナムの政府首脳および民間経済人と懇談


経団連では1985年に稲山会長を団長とする訪ASEANミッションを派遣して以来、89年の斎藤ミッション、92/93年の平岩ミッションと、ASEAN各国の政府首脳や民間経済人との対話を続けてきた。豊田経団連でも、ASEAN各国との対話を重視するとともに、本年中にASEAN加盟が予定され、今後大きな飛躍が期待されるベトナムとの関係をさらに緊密にするため、「訪ASEAN(第1次)ベトナム・ミッション」を派遣した(団長:豊田会長、団員:川勝、歌田、鈴木、米倉、三田、関本、末松、青井の各副会長、三好事務総長、糠沢常務理事)。

  1. 全体の印象
    1. 3カ国の経済水準には大きな格差はあるものの、いずれの国も高成長を実現しており、活気に満ちていた。また、各国の指導者が経済発展に向けて、貿易・投資の自由化に積極的に取り組んでいることが感じられた。

    2. さらに、日本に対する期待が高いことを痛感させられた。
      各国の要人からは、日本の投資を通じた技術移転、人材育成、中小企業の振興、日本の輸入拡大などについて強い期待が表明された。投資に関しては、シンガポールでは海外統括部門や高付加価値産業の移転、タイからは農村部への積極的な投資、ベトナムでは中小企業の投資が特に強調された。

    3. APECについては、タイ、シンガポールの政府首脳から、日本のリーダーシップに対する期待が「米国との橋渡しを」という表現で表明されたほか、EAECとの関係では、APECを最優先すべきだとの発言があった。

    4. 日本の役割に期待するアジア諸国の声に応えるためには、日本自身が規制緩和を徹底して行い、景気回復を確実なものとして、経済を活性化していくことが重要であると感じた。

  2. シンガポール
    1. シンガポールでは、ゴー・チョクトン首相、リー・シェンロン副首相、ヨー・チョウトン商工相、リー・クアンユー上級相、フィリップ・ヨー経済開発庁長官と会見したほか、チュア会長はじめシンガポール商工会議所連合会幹部と懇談した。

    2. シンガポールは93、94年と2年連続10%成長を遂げ、また95年も10%近い成長が見込まれ、経済は極めて好調である。これを維持するため、シンガポールは、
      1. 投資環境の改善(高付加価値産業や地域統括本部の誘致)
      2. 第三国での協力推進
      3. APEC、WTO等を通じた自由化
      をさらに進めたいとしている。

    3. シンガポール側からは、同国は製造業を重視し、今後ともGDPの25%を占めるようにしたいとの表明があった。また、中国の蘇州工業団地など、シンガポールが第三国で推進しているプロジェクトに日本企業が参加するよう要請があった。このほか、ゴー首相からはアジア欧州サミット構想について説明があった。

  3. タイ
    1. タイでは、チュアン首相、スパチャイ副首相と会見したほか、タイの民間3団体(タイ貿易院、タイ工業連盟、タイ銀行協会)首脳と懇談した。
      また、タイ投資委員会主催のBOIフェアに出席し、プミポン国王に拝謁する機会を得たほか、経団連が協力しているアジア工科大学院(AIT)、タマサート大学インターナショナル・インスティチュート・オブ・テクノロジー(IIT)を訪問した。

    2. チュアン首相からは、中央と地方の格差是正、所得配分の公正化が引き続き政権の主要課題であるとの認識が示された。
      また、日本から地方に対する投資を拡大するとともに、農産品などタイ製品の輸入拡大に力を入れてほしいとの要請があった。

    3. このほか、EAEC、インドシナ開発、ミャンマーとの関係、産業空洞化問題等に関して意見交換を行った。
      当方からは、2005年の名古屋万博に対するタイ側の協力方を要請した。

  4. ベトナム
    1. ベトナムでは、ムオイ書記長、キエット首相、アイン国家主席、カイ副首相、サム国家計画委員長、スワン国家協力投資委員長、サン・ホーチミン市人民委員長(市長)、タイン商工会議所会頭と会見した。
      また、日本の経営者が読んで感銘を受けた日本語の本を寄贈した。(経団連くりっぷ No.4 "掲示板"参照)
      ホーチミン市では産業見本市や工場見学を行う一方、経済広報センターとベトナム太平洋経済センター(VAPEC)が主催したセミナーに、青井副会長と糠沢常務理事が出席した。

    2. ベトナムにとって、日本は第1の貿易パートナーであるが、投資では日本は第5位にとどまっている。ベトナム側は、日本のさらなる投資拡大を求めたが、当方からは、ベトナムの投資環境改善に関する要望書を提出した。本要望書に対する回答は、4月のムオイ書記長訪日の際に予定されている第3回日本ベトナム合同経済会議において行われることとなった。

    3. このほか、
      1. 生産管理に関する日本の経験の移転
      2. 中小企業との交流促進
      3. 人材育成への協力
      等について意見交換した。


ド・ムオイ書記長(右)と会談する豊田会長


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