3月常任理事会/3月7日

アジアの期待にどう応えるか
− 対アジア関係について懇談


常任理事会では、訪ASEAN(第1次)・ベトナム経団連ミッションの報告を踏まえ、アジア地域の期待にわが国がどう応えるかを中心に、対アジア関係について懇談した。
また、当日は、東京証券取引所の山口理事長より、証券市場の活性化・機能強化について話を伺うとともに、国際産業映画・ビデオ祭94年度グランプリ作品『水の印象』を上映した。以下は、対アジア関係に関する意見交換の概要である。

  1. ASEAN(第1次)・ベトナム・ミッションの印象
  2. 豊田会長、川勝・鈴木・青井3副会長から、発言があった(ミッションの概要については、本誌第5号6頁参照)。
    また、歌田副会長から、経団連がこれまでに派遣したミッションの成果も踏まえ、ベトナム、インド、ミャンマー3カ国の印象について発言があった。

    (1) 豊田会長発言要旨
    1. シンガポール、タイ、ベトナム3カ国とも、経済水準に大きな格差があるものの、高成長を実現し、活気に満ちており、各国から、日本の投資を通じた技術移転、人材育成、中小企業の振興、日本の輸入拡大について強い期待が表明された。
    2. APECについては、日本がアメリカとの橋渡しをすべきであるとの指摘が出されるとともに、EAECより、APECの結束を最優先すべきであるとの見解が示された。
    3. 日本に対するアジアの期待に応えるためにも、景気の回復を確実なものとする一方、日本自身が規制緩和や市場開放を徹底し、新産業・新事業を興して経済を活性化していくことが重要である。

    (2) 3副会長発言要旨
    1. タイでの事業展開に際して、アメリカの企業は、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学など有名大学の同窓会をうまく活用している。日本も、この地域の人材育成に求心力を発揮すべきである。
    2. タイでは、タマサート大学・インターナショナル・インスティチュート・オブ・テクノロジーとアジア工科大学院を見学した。理科系の教育に力を入れている様子が伝わり、わが国も、理科系の教育問題を改めて真剣に考えていく必要があると感じた。
    3. シンガポールは、経済の拡大に伴い、アメリカへの配慮を真剣に考えるようになっている。タイも同様である。その分、日本に対する期待も高まっている。
    4. シンガポール、タイでは、APECを非常に大切に考えている旨の発言があった。特に、欧州の要塞化を防ぐため、APECを活用していくとの考えが示された。
    5. ベトナムは、これから発展が始まる国である。トップは、真面目な人ばかりであり、おそらく相当なスピードで立ち上がるのではないかと思う。日本の支援に対する期待も非常に大きいものがあった。

  3. ベトナム、インド、ミャンマー3カ国訪問の印象
    1. これら3カ国は、1人当たりのGNPは、200 〜300 ドルにすぎない。しかし、人口も多く、潜在的可能性が大きく、ASEANの次に、この3カ国が成長センターとして、控えているという実感を持った。
    2. 3カ国とも、社会主義経済から市場経済への移行を開始して、まだ4〜5年の実績しかないが、そのスピードは目ざましい。政権が変わったとしても、経済改革は、後戻りすることはないと感じた。
    3. 3カ国とも、日本企業の進出、特に直接投資への期待が大きい。欧米の企業は、投資を活発に行っている。わが国も、これら諸国を、生産基地あるいはマーケットとして位置づけ、経済交流の拡大を進めていく必要がある。
    4. 歴史や文化がそれぞれ異なるアジアにおいて、アングロ・サクソン的な市場経済を丸ごと持ち込むべきかどうか疑問である。日本も含めて、それぞれの国にあった形を求めていくべきであると感じた。

  4. フロア発言
  5. 続いて、出席された秋元三菱マテリアル社長、秋山ジャスコ副社長より発言があった。概要、以下の通り。
    1. 最近のわが国の自由化の状況を見ると、ASEAN諸国に先を越されている感じを受ける。国内的には、がんじがらめの規制に縛られながら国際的な競争にさらされる日本の二重構造の矛盾は、今回の急激な円高で一層明らかになりつつある。このような国が、アジアとアメリカとの橋渡しができるのか若干疑問である。日本がASEAN諸国からの期待に応え、APEC大阪会議でリーダーシップを発揮するためにも、規制緩和が必要であり、経団連も引き続き、その推進に努めて欲しい。
    2. ベトナムへの投資には、政治形態の違いという難しい面もあるが、ベトナム側の意欲と日本への期待は非常に大きい。既に、大型案件もスタートしており、今後、投資がさらに拡大すると予想される。経団連としても引き続き、ベトナムの投資環境改善に向けて、働きかけを行って欲しい。
    3. ミャンマー、ラオスなど自由化の夜明けを迎えようとしている国や、インド、フィリピンといった最近目ざましい回復を見せている国では、西欧諸国が、旧宗国としてのコネクションも利用しつつ、政・財・官一体となってビジネス活動を展開している。わが国としても、今からきめの細かいアプローチを行う必要がある。
    4. グローバル化、情報化、消費者のライフスタイルの変化の中で、製品輸入に加えて、生産や加工を海外で行う開発輸入がますます重要になってきている。現在、イオン(ジャスコ)・グループ全体の輸入額の70%がアジア地域からであるが、今後、生産、物流インフラの整備に伴い、取扱い比率は、一層増加するものと思われる。今後は、流通ネットワークの拡大に努め、一層の価格引き下げ、内需拡大への貢献を果していきたい。
    5. 経団連としても、アジア諸国における規制の改善を働きかけるとともに、税制改革、輸入通関業務、港湾設備の充実といった、受入れインフラの整備を、継続的に要請して欲しい。


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