なびげーたー

アジアに自由化競争の波を引き起こそう

アジア部長 角田 博


6月中旬経団連ゲストハウスでアジア・リーダーズ・フォーラムが開かれた。豪州のアジア・オーストラリア研究所が主催したもので、経団連はNIRAとともに後援をした。豪州からはエバンス外相が出席し、同国のアジア化にかける意気込みを示し、12のアジア諸国から政府・学識経験者・ビジネスマン等が参加して「アジアの地域協力と将来図」について意見交換した。

豊田会長はホストをされたディナーのスピーチで、「アジアの多様性から見て、この地域は力を合わせてある強い核を守るというよりも、多様性をできるだけ認め合い、市場の動きを妨げない方向で協力を深めるのに向いている。アジア人は対決よりも建設的なコンセンサスを求めるやり方に心を惹かれる。」と述べられた。

この基本的考え方は、経団連が先に発表した意見書「アジア太平洋地域協力における日本の役割」にも貫かれている。

確かにアジアは多様であるが、共通点もある。各国とも民主化を急ぐよりも、まず自国のテンポにあった経済発展の追求に力を入れている。

「雁行形態の経済発展」−いささか使い古された感はあるが、日本を先頭にした雁の群れを表わすこの言葉は、まさに現在のアジアの姿をよく示している。先頭の雁は最近失速気味だが、これまではアジアの雁達を経済発展過程に導いてきた。

雁は飛びながら前の雁から学ぶことができ、その実践の過程で、前後を飛んでいる雁と追いつき追い越せの、静かに見えるが実は激しい競争をしている。

この競争によってアジアは米国市場依存一辺倒から域内市場依存という自律的かつ連鎖的な成長過程に入りつつあり、「東アジアの奇跡」と呼ばれるに至った。

しかし21世紀に向かってアジア諸国は深刻な課題を抱えている。投資・貿易の自由化、地域間格差の解消、さらには環境問題、食料・エネルギーの確保等々。こうしたマイナス要因を克服するための学習意欲と競争心が新たなバネになって、さらなる発展がもたらされる。

自由化について、日本の自動車産業を例にとる。資本の自由化は巨大企業GMに対抗するには早すぎるという意見も強い中で行われたが、早目の自由化がバネになって国際競争力の強化に成功した。

経済社会が高度に発展し、そのつながりも極めて複雑化しつつある今日、人為的措置によって経済を正しい方向に導くのは不可能に近い。規制を緩和し市場に委ねるしかない。

APEC大阪会議では、一部が主張するように一律の自由化を押し付けるべきではない。各国の自主性に任せるべきである。その一方で日本が、自由化とそのための規制緩和の実例を示し、雁達の間で自由化競争を引き起こすことが求められる。規制緩和・自由化に失敗すればどうなるか。反面教師にならないよう日本に期待している。


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