経団連意見/9月19日

消費者志向型の流通システムの確立に向け、一層の規制緩和を求める


経団連では、9月19日の第567回理事会で意見書「消費者志向型の流通システムの確立に向けて」をとりまとめ、政府等関係方面に建議した。以下はその概要である。

  1. 流通構造の変革
  2. 現在、消費財の流通分野では、「新価格革命」とも呼ばれる価格低下や多様な流通業態の出現、「製販同盟」といった新たな取引システムの形成等、かつてない大規模な地殻変動が進行している。こうした変化の影響は、流通業にとどまらず製造業・物流業にも及んでいる。
    とりわけ注目すべきは、購買時の価格・品質両面の選択を通じて、消費者の主導権が飛躍的に強化されていることであり、この意味で、現在の流通分野での変動は構造的な変革となっている。

  3. 流通構造変革の背景
  4. この構造変革は、流通業をはじめとした民間事業者の活発な事業革新によりもたらされたものである。事業革新を促した経営環境の変化として、以下の点が挙げられる。

  5. 流通構造変革の効果
  6. 流通構造変革は、経済社会に以下のような効果をもたらしている。

  7. 政策要望と民間事業者自らの課題
  8. 現在進行中の流通構造変革は、様々な効果をもたらしていることから、今後、この変革を加速するとともに、中小企業問題をはじめとする過渡的な摩擦を軽減する観点から、政府と民間事業者は相互に協力して、次のような課題に取り組む必要がある。

    〔政府が果たすべき役割〕

    1. 規制緩和の推進

      流通構造変革は、民間事業者の事業革新により推進されるものであり、政府は規制緩和を推進すべきである。大店法の段階的廃止等、「規制緩和推進計画」を前倒しで実行するとともに、計画内容の拡充を図るべきである。
      地方公共団体においても、独自規制を抜本的に見直すとともに、行政手続条例を早期に制定すべきである。

    2. 新たな中小流通政策の展開

      政府は、意欲ある中小事業者の事業革新を積極的に支援すべきである。中小卸売業については、水平的・垂直的連携を強化する観点から、共同輸入や共同配送、情報化等の取組みに対し重点的に助成すべきである。中小小売業については、従来の商店街整備を軸とした支援策から、今後は魅力あるまちづくりの観点から、意欲と能力のある個店の事業革新に重点を置いた選択的な支援策を強化すべきである。
      その際、三公庫一事業団からなる政府系中小企業金融機関の役割も見直し、中小企業政策の効率的一元的展開を検討すべきである。

    〔政府と民間事業者が相協力して取り組むべき課題〕

    1. 競争政策の適切な運用と商慣行の是正

      規制緩和の実効を上げるため、政府は競争政策の適切な運用を図る必要がある。とりわけ、大規模小売業のバイイングパワーの増大に伴う諸問題にも配慮すべきである。民間事業者においても、商慣行の透明化に努める必要がある。

    2. 環境・廃棄物対策

      流通委員会報告「循環型流通システムの構築に向けて」(94年4月)で指摘した通り、官・民・消費者が相互に協力し、廃棄物の回収・リサイクルを視野に入れた循環型流通システムを構築することが求められている。

    〔民間事業者が主体的に取り組むべき課題〕

    1. 情報化の推進

      QR、ECR等の普及を図り、流通システム全体として効率化を推進する必要がある。このため、POSやEDI等情報システムの導入・普及等に関連業界が連携して取り組む必要がある。

    2. 消費者対応の充実

      規制緩和の進展や商品選択肢の幅の拡大に伴い、消費者が正しい情報に基づき判断が行えるよう、民間事業者は、情報提供の充実に努めていく必要がある。またPL法施行に伴い、商品の安全性チェック等適切な対策を講じていく必要がある。


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