国際文化交流委員会(司会 委員長代行 日枝 久氏)/12月22日

わが国の国際文化交流をめぐり浅尾国際交流基金理事長と懇談


国際文化交流委員会では、「経済と文化は国際交流における車の両輪」との考え方に立ち、企業の文化交流活動を推進している。そこで当委員会では、わが国の文化交流の現状についての理解を深めるため、国際交流基金の浅尾理事長を招いて、標記会合を開催した。
なお、当日は国際文化交流委員会の活動状況ならびに「1994年度社会貢献・国際文化交流実績調査結果」(経団連くりっぷNo.23 参照)についての報告も併せて行なった。

浅尾理事長日枝委員長代行

  1. 浅尾理事長説明要旨
    1. 冷戦が終わりイデオロギーの対立が終わったが、世界では地域・文化・宗教間の紛争が絶えない。そのため、今ほど異文化間の相互理解・友好関係の確立が重要な時代はない。特に、最近はアジア諸国が文化面でもアイデンティティーを主張するようになってきている。

    2. わが国の国際文化交流のあり方を検討するため、細川首相(当時)の要請を受けて1993年に「国際文化交流に関する懇談会」が発足し、94年6月に「新しい時代の国際文化交流」と題する報告書がまとめられた。

    3. 同報告書は、国際文化交流が重要になってきた背景として、
      1. 国家間のイデオロギーの対立に代って、民族・文化・宗教等に根ざす紛争が増えている、
      2. 日本の国際社会における地位の向上に伴い、異文化理解の必要性が高まっている、
      3. 市場経済の浸透により、専門家を海外へ派遣する必要性が増している、
      4. 世界の優れた遺産を保存する必要がある、
      などの点を指摘している。

    4. 日本のハイテク製品は世界的に知られているが、それを造っている日本人の「顔」が見えないという批判に対処していくには、日本文化をより積極的に外国に発信していくべきである。その際、一方的な発信ではなく、異文化(特にアジアの文化)の受入れにも努める必要がある。その他、新しい時代を担う青少年を対象とした交流を推進していくべきである。地域としては、アジア太平洋との交流を深めることが必要であり、さらにはマルチ・メディアを利用した情報の発信・交流を重視すべきである。

    5. 国際文化交流の実施体制を強化するためには、国際交流基金の予算と職員の定員を倍増させる必要がある。またNPO、NGO、企業、個人、特殊法人、国や地方公共団体など、文化交流の担い手が多様化しており、相互の連携を強化していく必要がある。

    6. 国際交流基金は、故福田赴夫元首相の提案で、1972年に設立され、その事業内容は、人物交流、日本研究の振興、日本語の普及、舞台芸術・展示事業の助成、出版・映像による交流などである。対象地域別には、27%がアジア太平洋、20%が北米であり、その他、ヨーロッパ、中近東、アフリカ、中南米地域など全世界を対象としている。
      国際交流基金は特定公益増進法人であり、海外を対象とした事業は、同基金を通せば免税となる。
      基金の特別機関の1つとして1991年に日米センターが発足し、人権・環境問題など広範囲な課題に取り組んでいる。また95年10月にはアジアセンターが発足し、アジア地域内での交流を促進するとともに、アジアが抱えている地域的問題にも取り組んでいる。

    7. 大規模な国際文化交流事業については民間からの協力が不可欠であり、95年に日本ブラジル修好百年記念事業を開催した際には、民間に資金協力をしていただいた。
      文化交流は息の長い事業で、公的資金の導入が必要不可欠だが、文化交流団体の事業への助成も必要であり、是非民間の協力を得て文化交流事業を推進していきたい。

  2. 質疑応答
  3. 経団連:
    国際交流基金の年間予算はどのくらいか。
    浅尾理事長:
    年間予算は約200億円だが、うち60億円が運用益で、残りの140億円が政府からの補助金である。最近の金利低下によって、運用益で行なっていた仕事量が減っている。

    経団連:
    ODAとの関連はどうか。
    浅尾理事長:
    ODAは年間で1兆円を上回り、その一部を国際文化交流に使用すべきだとの意見もあるが、実現には至っていない。

    経団連:
    欧州の文化交流活動と比較してどうか。
    浅尾理事長:
    英国のブリティッシュ・カウンシルの年間予算は約1,000億円であり、それに比べて日本の国際交流基金は約200億円と5分の1程度である。

    経団連:
    日本では国際文化交流活動を実施している機関が多数存在し、活動の全体像をつかむのが難しい。地方公共団体、国、企業、NGO等の活動の情報を一元化するという動きはあるのか。
    浅尾理事長:
    今後、マスメディア、インターネットなどを活用して、情報の蓄積を進めていきたい。


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