シェルトンOECD事務次長との懇談会(座長 井上實氏)/3月26日

規制制度改革は国際的な潮流


就任後初めて来日したOECDのシェルトン事務次長を迎え、規制制度改革、多国間投資協定(MAI)、貿易と競争政策などへのOECDの取組みについて懇談した。同次長は、特に規制制度改革を取り上げ、各加盟国の実質的な進捗を促す政策勧告を策定したいと説明した。これに対し経団連側は、わが国の規制緩和推進を求める上で強力な武器になろうと期待を表明した。
以下は同次長の説明の概要である。

  1. OECDの姿勢
  2. OECDは、加盟国共通の経験に基づき、優れた政策勧告を策定することを任務とする。交渉ではなく、コンセンサスづくりなど建設的かつ協調的なアプローチを特色とする。
    経団連の「経団連ビジョン2020」や昨年10月の規制緩和要望に見られる民間部門、消費者利益の視点は、OECDの考え方と合致するものと思う。

  3. 規制制度改革
  4. 96年5月の閣僚理事会に中間報告、97年5月の閣僚理事会に最終報告を提出すべく、現在作業を進めている。特に具体的な分野におけるケース・スタディを重視している。各国の成功例、失敗例の検討から、より広範で実体的な政策結論が導かれ、各国政府、産業界が規制制度改革を推進する上でも役に立つ、実質的な報告ができると考える。
    規制制度改革は、単に政府の市場介入を廃止することだけを意味するものではない。若干の規制の存続、規制の変更、改善などを含む、より広い概念である。今やOECD加盟国は、経済成長を刺激し、雇用を創出する必要に迫られ、いずれの国も何らかの形で規制制度改革のプログラムを実施している。80年当時わずか3〜4カ国であったことを思うと隔世の感がある。規制制度改革は国際的潮流であるが、日本はその中でも先駆的な存在といえる。

  5. 多国間投資協定(MAI)
  6. 95年9月から交渉が開始され、97年の閣僚理事会までの完成を目指している。野心的で困難な目標だが、達成は可能と考える。交渉は順調で、96年夏には全項目の条文が出揃う見込みである。それ以降は、自由化の有無、程度につき難しい決定を迫られよう。
    MAIは、OECD加盟国に限らず署名・調印した国にはオープンな協定とする。内国民待遇と最恵国待遇を原則とすることにより相互主義を抑制していく。また、拘束力のある紛争処理メカニズムを、国対国だけでなく投資家対国の紛争にも適用する。

  7. 貿易と競争政策
  8. 貿易グループと競争グループの意見の相違が大きく、他の貿易関連課題に比べて議論が遅れているが、96年5月に合同ワーキンググループが設置されるので、進展が期待される。

日本語のホームページへ