新しい全総計画に関するワーキング・グループ/4月22日

新しい地域産業政策のあり方について検討


バランスのとれた地域構造を構築するためには、地域産業の展開が不可欠である。政府の産業構造審議会産業立地部会(部会長 伊藤善市帝京平成大学教授)では、この4月に今後の地域産業政策のあり方に関する検討に着手した。
そこで「新しい全総計画に関するワーキング・グループ」では、4月22日、通商産業省環境立地局の中野立地政策課長はじめ幹部より、従来の産業立地政策の評価や今後の検討課題等につき説明を受けるとともにワーキング・グループメンバーからもプレゼンテーションを行ない懇談した(進行:齋藤昌二座長代行[三菱化学理事・調査室長])。
以下はその概要である。

  1. 中野立地政策課長説明要旨
    1. 通産省では、1970年代より工業再配置政策を推進し、工場等の移転・分散を図ってきた。その結果、地方における工業集積の促進など一定の成果があがったと考えている。しかし経済のグローバル化、国民の価値観の多様化など内外環境が変化する中で、従来までの移転・分散策を転換すべきなのではないか、という問題意識を持つに至った。そこで今般、産業構造審議会に対し、従来の「産業立地政策」から新たな展開を図る観点から、通産大臣より「内外の経済社会環境を踏まえた今後の地域産業政策のあり方」につき諮問された。

    2. 産業立地部会においては、本格的な大競争時代に対応した魅力ある事業活動環境の提供の必要性、社会資本整備の進展など各地域の潜在能力の向上等を踏まえ、地域の特性・条件を十分に活かしながら、新産業の創造等により、地域の内発的発展を図ることについて検討を深めていきたいと考えている。全国均一でなく、ポテンシャルのある地域に対し、重点的な産業政策の展開を図ることが可能かどうかについて、地域や産業界の意見を聞きながら詰めていきたいと思う。
      現在、研究開発型産業を核とした産業振興やベンチャービジネスの育成等に関する内外の事例調査等をもとに審議を進めており、本年夏までに基本的な検討の方向性をとりまとめる予定である。また現在検討されている新しい全総計画にも、産構審における審議の成果を反映させることにしている。

  2. 経団連側説明要旨
    1. 新産業・新事業の創造
      ―経団連産業政策部阿部調査役―
    2. 経団連では、95年7月、「新産業・新事業創出への提言−企業家精神を育む社会を目指して−」をとりまとめた。特に地域においては、地域におけるインキュベータと他の研究所、大学等との連携の強化が求められる。また国に対しては、公共調達の一部をベンチャー企業からの購入に充てる等、立ち上がり時の支援策や真の意味でのリスク・マネーの提供等が求められる。

    3. 広島にみる地域産業
      ―長銀総合研究所産業調査第三部 伊藤地域開発室長―
    4. 広島には、広島市、福山市等の中枢・中核都市や、研究開発拠点型の東広島市など、内発的発展のポテンシャルに富んだ都市が存在している。
      例えば広島市は、独特の歴史的背景に根ざした地域産業(金属加工業、造船業、食品産業等)が発展している。造船不況以降、同地域でも構造調整が進んだが、独自の技術を有する企業は他分野に進出し、新たな市場を獲得している。
      福山市では、中堅企業がベンチャービジネスに取り組み成果をあげているが、その背景には歴史的に受け継いだ企業家的な精神風土があると思われる。ただ現時点では、福山におけるこれらの取り組みは地域内で完結しており、これを周辺地域に波及させようとする場合、地域的な人材の供給を可能にする理工系大学の設立やベンチャー企業向けのオフィス団地の提供等が求められよう。
      東広島市は広島大学の移転を契機に産学官の研究拠点の立地が進んでおり、地場産業である醸造業等を活かした産業展開が期待されている。しかし、地域のインキュベータ機関にはメリットが乏しく、一部脱退した企業もみられることから、大学や研究所の立地が必ずしもベンチャービジネス振興の決め手にはならないということもいえよう。
      今後の地域産業の支援策のあり方としては、このようなポテンシャルを有する地域に対し、集中的に施策を実施することが有効と思われる。

    5. 大都市圏の土地利用開発の傾向
      ―清水建設開発計画本部 岩崎プロジェクト第2部課長―
    6. バブルの崩壊以降、大都市圏では、住宅投資、公共投資が堅調に推移する一方、鉱工業等に対する建設投資がピーク時の3分の1から4分の1に落ち込んでいる。またオフィス人口も減少傾向にあり、企業のリストラの影響の現れと推測される。さらに懸念すべきは、投資が海外へ相当程度シフトしており、国際分業の進展に伴い海外生産比率が上昇している点や、93年以降は雇用にも影響が出てきている点があげられる。
      大都市圏の土地利用転換の背景には、工場閉鎖や集約化に加え、商業立地の郊外化等があげられる。また臨海部の工場地域のように、大規模な遊休地が発生し、再利用の目処が立ちにくいものもある。
      このように、大都市圏においても新たな産業立地のあり方を検討することが求められるが、そのためには、
      1. 港湾、空港等国際的にみて魅力ある地域整備の推進、
      2. 都市情報インフラ整備と都市コンセプトの明確化、
      3. 新しい産業・業態の育成、
      4. 人材の再教育システムの構築、
      などが求められよう。

    7. その他
    8. 日本で新たな産業の立地を可能にするためには、現在の縦割りの規制を抜本的に見直し、総合的な地域開発を可能にすることが不可欠である。また、企業の税負担についても軽減の方向で見直す必要がある。


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