現在、わが国は大転換期にある。冷戦後の新しい国際秩序が模索される中にあって、明治維新以来の「追いつけ、追い越せ」型を前提とした経済社会システムが完全に行き詰まり、今後は自ら新しい発展のモデルを構築しなければならない。昭和21年に発足した経団連は、戦後の復興期、高度成長期、調整期といった時代の日本経済を常にリードしてきたが、今日の大転換期を前に、自らも大きく変わることが求められている。
経団連では去る1月、豊田会長のリーダーシップの下で、西暦2020年を展望した経済社会の長期ビジョン「魅力ある日本−創造への責任」をとりまとめた。このビジョンにおいて、わが国は国民や企業の創意工夫と活力が最大限尊重され、地球的な視野で行動し、責任を果たす「活力あるグローバル国家」の実現を提唱した。また「世界から信頼され、尊敬される日本」を目指すべきであるとした。
このビジョンを経団連活動の基本方針と位置づけるとともに、その実現に全力を尽くすこととしている。そのため、今般活動の中心となる政策委員会の思い切った統合・再編を行ない、これまで42あった政策委員会を30に削減し、重要テーマに重点的に取り組むこととした。また、企業人政治フォーラムや創造的人材育成協議会を設置し、企業人と政治家との相互交流や教育の問題により具体的に取り組んでいくこととしている。
さらに、このようなビジョンの実現、委員会の再編に対応して、6月1日付で次のような事務局機構の抜本的改革を実施することとした。(なお改革の具体的な構想は、昨年来事務局員相互の間で徹底した討論を重ねた結果出来上がったものである。)
今回の機構改革では、これまでの部課制(12部体制)を廃止し、「経済本部」(本部長:立花宏)、「産業本部」(本部長:太田元)、「国際本部」(本部長:島本明憲)、「社会本部」(本部長:池誠)、「総務本部」(本部長:角脇通正)、「事業本部」(本部長:満島章)の6本部制とした。また、各本部の下には、一種のプロジェクトチームとして、主要テーマ毎にグループを置くこととした。例えば、「経済本部」には、経済政策、税制、経済法制、行革、また「産業本部」には、首都機能移転、国土、情報・新産業、地球環境、技術、防衛、「社会本部」には、総合企画、政治、企業・社会、人材育成、広報、出版、年史、情報メディアの各グループを設置した。また「国際本部」は、貿易投資、国際協力、国際文化交流、総括といった政策をベースとしたグループとアメリカ・カナダ、中南米、アジア・大洋州、中東・アフリカ、ヨーロッパ、ロシアという地域別のグループとの二重構造とした。そして、各本部員は原則として、政策別のグループと地域別のグループの両方に属することとしている。
この機構改革のねらいは、次の7つに集約される。
以上が機構改革のねらいである。グループ制の導入により、事務局員各自が専門性を深め、かつ本部制のメリットを活かしてより広い視野からわが国の当面する課題に取り組むことが期待される。
折しも、豊田会長は去る5月28日の総会以降2期目に入った。「変革、創造、信頼」という理念の下で、「大胆に構想し、着実に実行する」ことを掲げて登場した豊田経団連は、21世紀に向けて「経済社会のビジョン」の具体化に取り組むことになる。
経団連は本年8月に創立50周年を迎えるが、「経済界における各部門との連絡を図り、経済界の公正なる意見をとりまとめ、その実現に努力する」(経団連定款)という経団連の使命に対する期待は、国内ばかりか海外においてもますます高まっている。事務局は設立以来あまり規模を拡大することなく200人ばかりの小さな組織である。その意味では微力ではあるが、今回の機構改革を機に、これまで以上に会長、副会長、委員長等を補佐し、会員企業のニーズに対応した事務運営を図っていくよう努めていきたい。そのためには、事務局員の一人一人が意識の改革から行動の改革にまでつなげていかなければならないと考えている。また、会員各位におかれても、経団連に対する一層のご理解とご支援を賜るよう強くお願いしたい。