第19回日本カナダ経済人会議(日本側団長 江尻宏一郎氏)/5月13〜14日

アジア太平洋における日加協力を議論


5月13、14日の2日間、福岡にて、第19回日本カナダ経済人会議を開催し、両国からの参加者計426名が親交を深めた。全体会議ではアジア太平洋における日加協力の可能性や、両国にとって重要な隣国である米国とのより良い関係の構築について、講演やパネル・ディスカッションを通じて議論が盛り上がった。分野別の7つの分科会でも、実質的かつ有意義な議論が行なわれた。なお第20回会議は97年5月、トロントにて開催される予定である。

江尻日本側団長ブージー・カナダ側団長

  1. アジア太平洋へのゲートウェイ
  2. 1日目の全体会議は、江尻・ブージー両国団長の開会挨拶、麻生福岡県知事の歓迎挨拶で幕を開け、九州・山口経済連合会の川合会長による講演がこれに続いた。
    川合会長は、古代から外国文化の受入窓口となり、また明治維新を主導するなど開拓者精神にあふれる九州地域の特徴と産業構造について説明した。
    そして九州地域と東アジアとの間に存在する、経済・政治・文化面での種々の交流、および相互補完的な関係を紹介した。
    その上で、アジア太平洋重視を打ち出すカナダと、日本を含めた東アジアとの間で、貿易拡大、さらに人的交流をはじめとする関係の緊密化が図られるよう期待を表明した。

  3. 改革に立ち上がる日本経済
  4. 次にゴールドマン・サックス証券の石原会長から、日本経済の現状について報告があった。
    石原会長はまず、過去1年間の日本経済が緩やかながら回復を持続させてきたこと、コスト削減努力の結果、企業業績が回復を見せていること、輸入の増加により日本市場がさらに開放されつつあること、不良債権問題への取り組みが難航していることなどを、簡潔かつ明確に説明した。
    そして、日本の社会全体に、規制緩和、構造改革への本格的な取り組みが見られはじめていることに触れ、そのために経団連が96年1月に発表した「魅力ある日本の創造〜経団連ビジョン2020」の内容を紹介した。

  5. 環太平洋におけるモビリティ拡大
  6. 続いてダイエーの中内会長兼社長が、コンピューター映像を駆使しながら、21世紀の企業経営について講演を行なった。
    中内会長は、21世紀は太平洋の世紀となる、その太平洋の平和のために貿易や人の交流などのモビリティ(流動性)を高める必要があるとの考えを示した。その具体的な試みとして、ダイエーグループが取り組む環太平洋諸国からの輸入、情報収集、中国の流通近代化への貢献などについて紹介した。

  7. カナダ企業の対アジア投資に期待
  8. 午後はまず、パネル・ディスカッション「アジアにおける日加協力」が開かれた。
    議長の諸橋三菱商事会長が、導入としてまず日加双方で進む経済構造の変化について述べ、それに伴いアジアとの関係がますます重要になりつつあることを強調した。
    次にシャワッツ駐日タイ大使が、自ら深く関わってきたASEAN、APECにおける貿易自由化の進展について説明し、カナダ企業のアジアに対するさらなる投資への期待を表明した。
    これを受けて三好NKK社長が、同社のアジアにおける鉄鋼およびプラントエンジニアリング事業の経験に基づいて、カナダ企業との協力の可能性を示した。
    またスクリーバンSNC副社長が、日加企業が第3国において協力することの利点と、そのためのカナダ企業の課題について説明した。
    フロアからは、アジアへの投資に際してのインフラ整備の重要性、そのための現地政府や政府開発援助(ODA)による支援の必要性が指摘された。

  9. 現実を見据えた対米関係の構築を
  10. 続いて、パネル・ディスカッション「アメリカとどう付き合うか」が開かれた。
    まず、議長の大河原経団連特別顧問が、日加ともに、明確な現状理解に基づきより健全かつ円滑な対米関係を築いていくべきことを、改めて強調した。
    次に天野三井物産副社長が、紛争処理メカニズムの整備、消費者優先の政策、国際機関における連携などの面で、カナダと米国との関係に学ぶべき点の多いことを指摘した。
    これに対しテルマー・ステルコ会長が、北米自由貿易協定(NAFTA)、特に紛争処理パネルの問題点、米国とのビジネス上の問題点を指摘した上で、このような現実を見据え、日加が北米全体を視野に入れた協力関係を築くべきであると主張した。


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