経団連くりっぷ No.37 (1996年 7月25日)

統計制度委員会(委員長 奥田正司氏)/7月9日

経済統計からみた最近の経済情勢について松島日本銀行調査統計局長と懇談


統計制度委員会では、日本銀行の松島調査統計局長より、GDP統計や、日銀短観などの経済統計からみた最近の経済情勢について、説明を聞くとともに、意見交換を行なった。
併せて、福原企画部会長より政府統計の改善に向けた経団連の取り組みを報告した。

  1. 松島局長説明要旨
    1. 景気をわかりにくくしているいくつかの攪乱要因がある。まず、1−3月期のGDP成長率が、わが国経済の実力以上に良かった(1頁参照)が、4−6月期にはその反動が出るので、ある程度ならしてみる必要がある。また、来年4月からの消費税引き上げにより、消費者物価が1%強上昇し、その分家計の実質的な可処分所得が低下し、消費を下押す。特に、来年1−3月には駆け込み需要、4−6月期にはその反動などの影響が出よう。

    2. 民間需要の自律色は強まってきている。個人消費は、1−3月期に比べ、4月以降やや下振れているが、消費に影響を与える常用雇用、賃金などの雇用情勢は少しずつ回復している。設備投資は、業種的にも拡がりをみせはじめ、また、中小企業の動きも確かなものとなってきた。
      企業収益は、円安、低金利、企業のリストラの効果などから、改善しており、主要製造業は、収益を前向きの営業活動に投入する方向に転換しつつある。

    3. 95年度の経常黒字は、対GDP比1.9%まで縮小したが、海外部門のマイナスを補って余りあるだけ内需が増えており、景気回復のメカニズム自体が損なわれることはない。為替が多少変化しても、一旦海外に進出した企業は投下した資本を回収するため、海外での生産を続けざるを得ず、経常収支に引き続き影響を与える。しかし、為替相場が現状程度で推移すれば、経常黒字の縮小テンポは鈍化しよう。

    4. 補正予算編成については、公共投資の効率性が落ちており、現在のような硬直化した公共事業の配分では、乗数効果プロセスが働かない。財政バランスを含め、いろいろな角度から、慎重に議論していく必要がある。

  2. 福原部会長報告概要(政府統計の改善に向けた経団連の取り組み)
  3. 国土庁では「土地基本調査」の改訂、通産省では「企業動向調査」の新設を計画している。いずれも極めて記入者負担が大きな調査となる惧れがあるので、9日に企画部会を開催し、関係省庁から説明を聞くとともに、企業側から記入者負担の軽減を強く求めたところ、調査内容を一部再検討するとの回答を得た。


くりっぷ No.37 目次日本語のホームページ