経団連くりっぷ No.40 (1996年 9月26日)

なびげーたー

高齢者介護制度のあり方について

経済本部副本部長 遠藤博志


介護保険制度の導入をめぐって、関係者の間で議論が沸騰する中、法案の準備がすすめられている。経団連としても意見をまとめた。

経団連では、財政制度委員会を中心に、高齢者介護制度をはじめ社会保障制度の抜本的な改革について提言をまとめていきたいと考えている。その成果は、今年中に財政構造改革の提言の中で一体のものとしてとりまとめる予定である。

高齢者介護については、他の社会保障制度の改革と切り離して、先行的に新たな保険制度を導入するということで、厚生省が中心となってその法制化の準備を進めている。
しかし、これまでに明らかにされた介護保険制度案をみると、多くの問題がある。さらに、より本質的な問題として、国民負担の見通しを含め社会保障制度全体の改革ビジョンが示されていない。
わが国の社会保障制度は、世界に例をみない急速な高齢化・少子化、成長率の低下の中で、財源面からもその綻びは覆いがたいものとなっており、社会保障制度の総合的、抜本的な再構築が不可欠になっている。
そのような状況下で、他の社会保障制度の改革との関連性が十分に議論されないまま、新たな社会保険制度を導入することには大きな問題があるのではないかと考える。
また、提案されている制度では公費負担と事業主負担の割合が大きく、企業の社会保障負担は、税負担と相まって今後ますます重くなり、企業の活性化を妨げることになる。

このような問題意識のもと、経団連ではとり急ぎ社会保障制度改革の必要性と高齢者介護に関する問題に絞って見解をとりまとめ、9月20日に発表した。

ここで主張したポイントは、次の3点である。
第1に、社会保障制度全体を早急に改革していく必要があるということである。
第2に、本格的な介護制度の導入は必要であるが、そのためには社会保障制度全体について、相互の有機的連関を明らかにしながら、議論すべきである。そのような社会保障制度の将来ビジョンがないままでの介護保険制度の検討、導入には、俄には賛成しがたいということである。
第3に、社会保障制度改革は、

  1. 財政構造の改革、
  2. 民間活力の最大限の活用、
  3. 国民負担率の抑制、
  4. 財源方式の再検討と適切・公平な負担
の4点を実現するものでなければならない、ということである。

目下、与党および厚生省では、介護法案の次期国会提出に向けて準備しているようであるが、さらに十分な検討をすすめ、国民的コンセンサスを得る必要があると思われる。


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