経団連くりっぷ No.45 (1996年12月12日)

佐藤通産大臣との懇談会/11月28日

経済構造改革の推進に向けて佐藤通産大臣と懇談


経団連では、橋本総理大臣が推し進める5大改革の1つである経済構造改革を進める上で不可欠な行政改革・規制緩和、税制改革等、当面の重要政策課題をめぐり佐藤通産大臣ならびに通産省幹部と懇談した。通産省側からは大臣、政務次官他幹部23名、経団連側からは豊田会長、齋藤評議員会議長、関係副会長、委員長等28名が出席した。

  1. 佐藤通産大臣挨拶要旨
  2. 通産大臣を拝命するにあたり、橋本総理大臣より3つの指示をいただいた。第1は行政改革全般に協力すること、とりわけ規制緩和の実行であり、第2は、経済構造改革について通産省が中心となって進めること、第3に、欧州に加えアジア近隣諸国との関係も重視した通商政策の展開である。
    大臣に就任してすぐにAPEC閣僚会議に出席したが、そこで痛切に感じたことは、他国はすべて国益を最優先するということである。わが国も、これからはプロセスはオープンにしつつ国益に沿うものは堂々と主張していく必要がある。
    構造改革については、産業構造審議会基本問題小委員会から、時代を先取りした報告をいただいた。今後は全省挙げてその実現に取り組んでいきたい。同報告を踏まえ、総理の指示に従って各省と連携を図りつつ、まず高コスト構造の是正、とりわけ規制緩和を行なっていきたい。高コストというと、よく電力やガス料金等公共料金の高さが問題にされるが、賃金の高さに加えて、わが国固有の商慣行の問題がある。経済界には商慣行の是正をぜひお願いしたい。
    新しい雇用を創出しないと、空洞化により、今後5年間で124万人の失業が発生すると見込まれる。製造業の空洞化をある程度許容しつつ、新しい産業を創出することにより余剰雇用を吸収していかねばならない。そのためには中小企業やベンチャー、伝統産業における職人的な仕事など、今ある企業を核として新しい産業を育成していく必要がある。その環境を整備することが我々行政の仕事だが、経済界の皆様の主体的な取り組みをお願いしたい。

  3. 経団連側発言
  4. 以下の10項目について、出席の関係副会長、委員長より、経団連の考え方を説明し、その実現方を要望した。
    1. 経済構造改革の推進
    2. 行政改革・規制緩和
    3. 税制改革
    4. 科学技術政策
    5. 新産業創出
    6. 対外経済政策
    7. 国土開発と地域産業政策
    8. 競争政策
    9. 環境問題
    10. 情報化

  5. 佐藤通産大臣応答要旨
  6. 現在、「経済構造の変革と創造のためのプログラム」を策定中であるが、産業構造審議会基本問題小委員会報告を踏まえたものとしていきたい。行革、規制緩和については、省内ですりあわせているが、通産省が自ら一番厳しいものを出していきたいと考えている。
    行政改革会議は、総理の直属機関であることから、省として全面的に従うこととしている。これまで通産省はすべてを抱え込むところがあった。個人的な考え方ではあるが、他の役所にもあるものについては、離していくべきと思う。
    税制は大きな問題である。基本的には経団連の主張は良く理解できる。2人の政務次官のうち、党で財政部会長を務めてこられた石原政務次官に税制問題の担当をお願いした。上野政務次官には中小企業担当をお願いした。

  7. 石原政務次官応答要旨
  8. 企業が国を選ぶ時代にあって、インセンティブとしての税制の意味はますます重要になっている。国際的にそん色のない税体系を構築し、経済の活力を維持していかねばならない。税制改革にあたって、これまでは公平、公正、中立、簡素という見地から進められてきた。しかし、これらに加え、経済の活力維持という観点を入れていく必要がある。
    法人の実効税率は高水準となっており、通産省としても実質税負担の軽減を実現したい。課税ベース拡大論に対しては、商法、企業会計を歪めないことが大事であり、党の商工部会を中心にはっきりとモノを言っていきたい。
    新規分野への進出、分社化について企業のニーズが多いが、現状では税がそれを阻害している。連結納税制度の導入については省を挙げて努力したい。
    土地税制については、今年は固定資産税を中心に党を挙げて取り組んでいきたい。

  9. 上野政務次官応答要旨
  10. これまでの全総計画は右肩上がりの成長の下にあったが、今は経済構造改革の流れにあり、産業構造改革をいかに実現するかが課題となる。経団連の提言にあるように、研究開発や情報などの新社会資本を整備していくことが必要であり、公共事業の配分を見直していかねばならない。
    地域産業政策については、来年度の通産省の予算の目玉として地域産業集積活性化法の実現に取り組んでいる。これからのモノ作りを考える上でサポーティング・インダストリーを育てる必要がある。
    地価税については、税率を0ないし地価税そのものを廃止したい。固定資産税については、負担の重さについて党内で大合唱がある。
    住宅について、本年9月までは消費税率引き上げの駆け込み需要があったが、下半期以降は受注が減少している。今後、住宅取得促進税制の取り扱いが焦点となろう。


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