経団連くりっぷ No.47 (1997年 1月 9日)

国土庁幹部と経団連幹部の懇談会/12月19日

首都機能移転と新しい国土づくり、土地政策の展開


経団連では、新しい全国総合開発計画や総合土地政策推進要綱の策定、首都機能移転等に取り組んでいる伊藤公介長官、井奥貞雄政務次官ほか国土庁幹部を招き、当面の重要課題について懇談した。経団連からは豊田会長、那須、樋口、古川の各副会長、河野首都機能移転推進委員長、田中土地・住宅政策委員会共同委員長、前田同委員長代行などが出席した。

  1. 豊田会長挨拶
  2. 経団連では今年、2020年頃を見通した経済社会ビジョン「魅力ある日本」を発表し、その中で望ましい国土像として「首都機能移転は完了し、東京一極集中は是正され、分権型国家の構築が進んでいる。魅力ある地方が全国に展開する」というイメージを示した。新しい全総計画の策定や、国会等移転審議会における検討は、こうした夢を現実のものとする取り組みであり期待している。

  3. 伊藤長官挨拶
  4. 政府は1962年の最初の全総計画の策定以来、多極分散型の国土の形成に取り組んできたが、現実には首都圏に国民の4人に1人が住む状況となり、地方の過疎はますます進んだ。そこで、来年6月を目途に今までの全総計画とは異なる新しいコンセプトの全総計画を世に問おうと努力している。
    また、アメリカでは住宅の取得が容易であり、ライフサイクルに応じた買い替えが行なわれているが、日本では土地や住宅はあまり流通しない。土地政策の見直しを行ないたい。また土地税制のあり方などについて大胆に見直すことが必要である。
    首都機能移転については、自分は東京の出身なので微妙な立場にあるが、歴史の1頁になるような仕事と考え、地方の人、東京の人それぞれにとってより良くなるよう、しっかり取り組みたい。

  5. 経団連側問題提起と国土庁側応答
    1. 新しい全総計画の策定
    2. 古川副会長:
      国土づくりは地域が主役である。産業構造の変化、大競争時代を迎え、地域は自らの判断と責任で重点化すべきインフラ、プロジェクトを選択すべきである。
      塩谷国土庁計画・調整局長:
      12月に新しい全総計画に関する国土審議会計画部会の調査検討報告が公表されたが、基本的考え方に「国から地方へ」「官から民へ」という経団連の考え方がとり入れられている。4つの国土軸の形成により国土構造の歪みを是正し、多自然居住地域の創造、地域連携軸の展開、大都市のリノベーション、広域国際交流圏の形成を促すことを訴えている。こうした戦略の下、安全な国土の形成、文化の創造、中枢拠点都市圏の整備、知的資本の充実、国際交通施設の全国適正配置などの施策を展開する。

    3. 首都機能移転の検討
    4. 河野委員長:
      首都機能移転は、行革・規制緩和、地方分権と一体として進められるべきであり、震災時に政治・行政・経済の全機能を停止させないためにも必要である。経団連は国会等移転審議会の活動を全面的に支援していく。
      五十嵐大都市圏整備局長:
      国会等の移転は、拙速と批判されぬよう世論の支援が得られる進め方をしなければならない。国会等の移転後も東京は経済・文化の首都であり続けることは間違いない。14兆円といわれる建設費用の半分以上は民間による投資であると考えられる。新都市の建設は50年を要するプロジェクトであり、国費の投入を多めに見て7兆円、30年でつくると見込んだとしても年間2200〜2300億円の負担となる。
      国会等移転審議会の委員には財政再建や行政改革に取り組む審議会、委員会のメンバーも含まれており、よくそれらと関連づけて検討されることとなろう。

    5. 今後の土地政策
    6. 田中共同委員長:
      土地税制は地価税の廃止とともに固定資産税や譲渡益課税のあり方などについて根本から見直すべきである。また土地の適正利用について具体策を総合土地政策要綱に盛り込むべきである。さらに社会経済情勢の変化を踏まえ、土地取引規制や工場等制限法を見直すべきである。
      窪田土地局長:
      総合土地政策推進要綱については、土地政策審議会の答申を受けて早速検討に取り組んでいる。また、土地税制については自民党の税制改正大綱において固定資産税や不動産取引税、登録免許税の軽減が盛り込まれ、一歩改革が前進した。地価税と固定資産税の関係など保有課税のあり方の検討については、引き続き取り組んでいきたい。
      土地取引規制については今年3月に各自治体に土地利用計画の見直しを促す通達を出し、夏以降効果が出始めたところである。今後も自治体への指導を徹底したい。
      五十嵐大都市圏整備局長:
      工場等制限法については、一方で工場の地方分散を求める声もあり、考慮が必要である。しかし、大都市で制限を行なえば自動的に地方に工場が行くのではなく、海外にも移る状況などを考慮し、新たな首都圏基本計画の方向づけの中で見直し作業に着手したい。なお、建替えや事業転換など可能なケースも多いことを理解いただきたい。

    7. むつ小川原開発計画の見直し
    8. 前田委員長代行:
      むつ小川原工業基地は、大型プロジェクトの誘致等に加え、新しい全総計画において改めて新たな目標と整備手法・推進体制のあり方が示されるべきである。
      鈴木地方振興局長:
      現在、青森県が開発の基本計画のフォローアップ調査を進めており、将来のあり方については、その結果を踏まえて検討される必要がある。
      大型プロジェクトの誘致も地元の意向を尊重し、貴重な大規模適地という本地域の特性を活かすことが重要である。また、港湾や道路などのインフラ整備も逐次進められている中、企業立地優遇措置等を活用し、関係者が連絡をとりつつ、用地分譲の促進を図ることが重要であると考えている。
      塩谷計画・調整局長:
      新しい全総計画でむつ小川原開発の新しいあり方を示す必要がある。報告では「エネルギー関連施設や試験研究機関の集積」という方向性を打ち出すに止まっており、今後結論を出したい。

  6. 井奥政務次官発言
  7. 今日、企業が国を選ぶ時代と思っている。法人税や土地関連税制のあり方等も考えながら国土の均衡ある発展を図っていきたい。


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