経団連くりっぷ No.49 (1997年 2月13日)

第115回関西会員懇談会/1月23日

構造改革の実現と関西経済の活性化に向けて


経団連では標記懇談会を大阪において開催した。豊田会長の97年年頭の「新年メッセージ」を受け、今回の懇談会のテーマは「構造改革元年─改革の実現に向けたわれわれの決意」とし、豊田会長、久米・関本・伊藤・樋口・今井・熊谷・古川・北岡の各副会長が、関西地区の経団連会員約300名の参加者とともに、具体的な課題について討議した。

  1. 関西会員からの発言
    1. 構造改革推進に向け市場原理の徹底を
      領木 新一郎氏(大阪ガス社長)
    2. 構造改革の推進にあたっては、社会・経済システムや企業経営の仕組みの中に、市場原理を徹底していくことが重要である。
      具体的には、
      1. 企業形態のグローバルスタンダードとしての純粋持株会社の解禁を実現し、経済活動に関して原則自由という基本姿勢をとること、
      2. 財政投融資制度が肥大化し、市場を通らない巨額な資金の存在によって、経済全体の効率性を低下させていることから、入口から出口に至るまで市場原理を貫徹する方向で改革すること、
      3. 企業行動や経営トップの心構えとしてのアカウンタビリティーを確立すること
      などが重要である。

    3. 経済構造改革のため技術力の強化を
      森田 桂氏(武田薬品工業会長)
    4. 日本経済を“強い円”の下でも発展できる経済構造に改革していくためには、サイエンス、テクノロジー、インダストリーと続く連環を構築することで、日本の技術力を強化しなくてはならない。
      京阪奈一帯の最先端の科学・技術研究所群は世界的レベルのセンター・オブ・エクセレンスとして育っている。ここで生まれる科学的シーズを産業化していくためには、研究者の知的所有権の確立とベンチャー・ビジネスを育てる規制緩和が必要である。
      政府は昨年7月に科学技術基本計画を決定し、来年度の科学技術関連予算を大幅に増額した。しかし計画の実効性をあげるには、経済界が政府に注文をつけると同時に、国のビッグプロジェクトに協力して推進することが必要である。

    5. 関空全体構想の推進を
      新宮 康男氏(住友金属工業会長)
    6. 94年9月に開港した関西国際空港は1日160便を超えるところまで発展した。しかし、現在の1本の滑走路では、2003年頃には処理能力の限界に達する。
      そこで、2本目の滑走路などを整備する2期事業が98年度末現地着工、2007年供用開始を目指して実施される。上物事業費4200億円のうち、420億円を民間出資で調達しなければならない。この民間出資確保に向け、関西経済界は一致結束して取り組む。出資の確保による2期事業の円滑な立ち上げと全体構想の推進に向け、経団連各社に一層の協力を得たい。
      なお関空会社の前社長が本日検察の取り調べを受けることとなったが、このような問題が生じたことについて極めて遺憾に思っている。倫理・規律の徹底を図ることが必要である。

    7. 大震災被災地の復興に向けて
      牧 冬彦氏(神戸製鋼所相談役)
    8. 被災地の復興にあたり経団連から強力な支援をいただき感謝している。特に、昨年5月には阪神・淡路経済復興シンポジウムにおいて港湾に関する規制緩和要望などを含むアピールを採択、即日、豊田会長から橋本首相に申し入れていただいた結果、過去10数年手を付けられなかった港湾関連規制の合理化が実現した。
      被災地の経済は、被災前の8割5分程度まで戻っているが、業界ごとにばらつきが見られる。こうした局面を打開すべく、指定地域内で立地した企業が税の減免や規制緩和の特例が受けられるエンタープライズゾーンの創設を国に求めているが、今のところ理解は得られていない。地元としても固定資産税の減免などを中心とする条例を兵庫県・神戸市がそれぞれ策定し、やれるだけの対策は講じてきた。
      震災3年目を迎え、地元では民間などが主体となった復興プロジェクトが具体化しつつある。これら事業を「新産業構造形成プロジェクト」として国の復興特定事業に認定し、思い切った支援を講ずべきである。

    9. 関西文化学術研究都市の整備促進を
      西八條 實氏(島津製作所会長)
    10. 関西文化学術研究都市は、21世紀に向けた創造的、国際的、学際・業際的な拠点づくりを目指したナショナルプロジェクトとして推進されてきた。現在50を超える研究所等が活動を開始している。国立国会図書館関西館の誘致についても国で予算化され順調に進んでいる。今春には「新田辺市」の誕生やJR東西線の開通などにより、都市環境が一段と整うことが期待される。
      現在、昨年4月にとりまとめられたセカンド・ステージ・プランの具体化に向けて努力している。同プランでも指摘しているように、特に近年、文化の重要性が強く認識されている。学研都市には、国立文化財総合研究機構や国立総合芸術センターの設置などの課題が残されており、経団連の支援を得たい。

  2. 経団連会長・副会長発言
  3. 伊藤副会長が「先の見えない苛立ちの状況を打破し、構造改革の推進を」、久米副会長が「ビジョンの明確な抜本的な税制改革を」と求め、樋口副会長が「欧米の経験から金融システム改革は待ったなしの状況である」と訴えた。今井副会長は「政府の規制緩和策は不十分」と指摘し、また、古川副会長は「被災地におけるエンタープライズゾーン構想の実現に向け経団連も訴えていく」ことを約束した。
    関本副会長は「欧米やアジアの産業界と地球環境問題における協力」を、熊谷副会長は「量から質へ、ハードからソフトへと変化する経済協力への対応」を、北岡副会長は「自由で多角的な貿易・投資体制の推進」をそれぞれ訴えた。最後に豊田会長が「本年こそが構造改革元年と考え、本気で取り組む」と締めくくった。


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