経団連くりっぷ No.55 (1997年 5月 8日)

なびげーたー

政府開発援助(ODA)の改革を求める

国際本部副本部長 江部 進


国際社会にその存立を大きく依存するわが国にとって政府開発援助(ODA)は重要な国際協力手段である。これを経済改革の中でどう考えるべきか。

ODAの実施については、例えば、円借款では4つの省庁の協議、合議が必要であり、技術協力では19の省庁が縦割りで事業を進めている。また、無償援助、技術協力、円借款の連携が不十分である。したがって、ODAを効率的に、また効果的に実施するために改善の余地が大きい。――これは、民間の意見であるとともに、総務庁の行政監察が大筋指摘しているところでもある。

経団連は数次にわたり意見書を纏め、これら問題点の改善を求めてきた。関係省庁・実施機関の縦・横の連携の緊密化、事業の重複の排除、権限の委譲、官民の連携がそれである。残念ながら、それに対する回答は捗々しくなく、逆に技術協力を行なう省庁は増加している。4省庁に依る円借款事業も、煩瑣な手続きなどで4年という事例もあり、実施までに相変わらず長い時間がかかるという。途上国支援で期待の大きい民活インフラに関し、ODAとのタイムリーな連携に懸念が出てくるのも当然である。

このように問題の改善がみられないまま、ODAは今厳しい状況を迎えている。それは、円高もあり途上国にとってODAの魅力が薄れている、財政構造改革の中でODA予算も聖域とされない、行革の柱として中央省庁再編成の検討が開始され、ODAも蚊帳の外には居られない、国内におけるODAへの理解と支持が明確でない等である。

経団連はこの程改めてODAの改革を求める意見(後掲)を発表したが、以上がその背景となっている。改革のポイントは4つで、1つは、ODAの政策と執行を各々一元化し、責任体制を明確にすることである。意見書は、執行について、19省庁のODA実施部門、国際協力事業団および海外経済協力基金を統合した国際協力庁(仮称)を設置、この機関が担うよう提案している。

2つめは、民間をイコール・パートナーとして(官民のパートナーシップ)総合支援計画の策定および個別プロジェクトの企画、立案、実施、事後評価に参画させること、3つめは、有償、無償、技術協力の弾力的な組み合わせ、二国間援助と多国間援助の総合的活用、他の援助国や国際機関との協調、ODAと民間経済協力との連携など援助のパッケージ化を駆使してその効果を高めることである。同時に、ODAの国内広報を充実していくことが重要である。

4つめは、93年より始まったODA中期計画は目標未達で今年度を以て終了するが、意見書では金額目標を盛った計画はやめるよう求めた。だからといって、ODA予算を機械的にカットしてよいということではない。国際社会に貢献し、日本の足場を維持し、強化していくことはきわめて重要なことである。効率化を図り、援助効果を極力高めるよう訴えたい。


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