経団連くりっぷ No.59 (1997年 7月10日)

なびげーたー

コーポレート・ガバナンスをめぐる動き

経済本部長 遠藤 博志


コーポレート・ガバナンスの議論が最近急速に高まっており、経団連としても早急な対応が求められている。この問題の背景と課題を整理しておきたい。

内外の動き

わが国におけるコーポレート・ガバナンスは、経済成長期には、さほど大きな問題になっていなかった。しかし、近年、とりわけバブル崩壊後は、これまで内外から評価されていた日本的経営も問題点が指摘され、株式の魅力も低下し、機関投資家からROE重視の経営が求められるに至っている。また、間接金融から直接金融に比重が高まるにつれてメイン・バンクが果たしてきたコーポレート・ガバナンスの役割も低下している。

さらに、ごく最近において、重大な会社不祥事が発生したこと、また株主代表訴訟制度の欠陥や不備を是正するため、米国の制度を参考に法改正を検討する作業が、自民党において開始されたこともあり、コーポレート・ガバナンスのあり方を見直す動きが強まっている。

企業の国際化、国際分散投資の進展に伴い、コーポレート・ガバナンスが国際的な問題となっている。OECDでは去る6月10日、11日の両日、民間人によるコーポレート・ガバナンスのシンポジウムを開催したが、その討議のまとめとして、OECDがミニマム・スタンダードないしガイドラインを設定することが望ましいとして、秋にも報告書をまとめることとしている。5月のOECDの閣僚理事会では、コーポレート・ガバナンスについての報告をまとめることを決定している。

主な論点

コーポレート・ガバナンスをめぐる内外の動きを概観すると以上の通りであるが、今後、経団連で検討するにあたっての主な論点は次のようなものとなろう。

  1. 会社機関の見直し
    • 会社法改正によるか(例えば監査役制度のさらなる強化)
    • 自主的対応か(ソニーの例、経営諮問委員会の設置、社外監査役と社外取締役による合同監査委員会の設置、株主総会の公開等)

  2. 日本的企業システムの変容とROE重視の経営
    • 従来の日本的企業システム(終身雇用、メイン・バンク、系列システム、株式の相互保有)はどのように変容するか。
    • ROE重視の経営は定着するか。

  3. 社外の諸機関の機能強化
    • 公認会計士監査の充実(Peer Reviewの導入、関与社員の交代制など)
    • 格付け機関の機能強化

自民党では、株主代表訴訟制度の見直しと併せてコーポレート・ガバナンスの問題を検討していくこととしており、経団連としても早急に考え方をとりまとめる必要があると考える。


くりっぷ No.59 目次日本語のホームページ