経団連くりっぷ No.59 (1997年 7月10日)

行政改革シンポジウム−がんばれ行政改革会議−/6月16日

行政改革の実現に向け、
行革会議、行革委員会の一層の活躍を


政府の行政改革会議(橋本龍太郎会長)は、11月を目途に中央省庁再編構想等の試案を取りまとめるべく検討を進めている。また、行政改革委員会(飯田庸太郎委員長)も、12月の設置期限を控えて総仕上げの時期を迎えており、両者の連携による行政改革の推進が期待される。そこで、経団連・経済広報センターでは、標記シンポジウムを開催し、両者の検討状況について聞くとともに、今後の課題等について意見交換を行なった。

  1. 豊田章一郎 経団連会長・経済広報センター会長挨拶
  2. 行政改革会議の検討は夏にかけて山場を迎えるが、これを乗り切るには幅広い国民的支援が不可欠である。本日の議論を通じて、改革の必要性や行政改革会議の役割が明らかになることを期待する。
    行政改革は今や待ったなしであり、与野党を挙げた取り組みや、既存の対立を超えた幅広い国民世論の盛り上がりが必要である。本日のシンポジウムが国民的コンセンサス形成の一助となることを期待する。

  3. 野田実 総務庁政務次官挨拶
  4. 野田総務庁政務次官 経済界や報道界の支援もあり、行政改革の必要性は地方にも浸透しつつある。
    規制の撤廃・緩和や政府の業務の民間への移管など、行政改革は民間経済の活性化につながるものであり、経済改革と一体である。したがって、経済界も行政改革に関心をもち、ご支援をいただきたい。


  5. パネルディスカッション
  6. 水野清 行政改革会議事務局長

    今次行政改革において最も重要な認識は「財政悪化」である。
    行政改革会議では、行政改革委員会が公表した「行政の関与の在り方に関する基準」(以下「基準」)を用いて中央省庁の統廃合を検討している。各省庁ヒアリングが一巡した後は、7月に新設する小委員会において組織改革の理論を再検討し、8月下旬には省庁再編の案の骨格を取りまとめたい。
    改革の切り口は、民間でできる業務は民間に移管し、実施部門は企画・立案部門から分離するということである。分離した実施部門は外局またはエージェンシー(独立行政法人)とし、後者については企業会計の導入や剰余金の内部留保等を認めてはどうかと考えている。
    なお、エージェンシーにはさまざまなタイプが想定されるため、基本法を制定の上、メニュー方式としてはどうかと考えている。

    宮崎勇 行政改革委員会委員長代理

    規制緩和については、行政改革委員会は、これまで14分野96項目について提案を行ない、ある程度の成果を挙げてきた。地方では、依然として各論反対が根強いが、全体としては一層の推進が必要と考えている。
    官民の活動分担については、民間主導の経済社会の実現に向けて、官・民の双方が担う役割を明らかにするということで、昨年12月「基準」を取りまとめた。行政改革会議では、中央省庁再編の検討にあたりこの「基準」を活用されるということで、行政改革委員会としても協力している。今年は、特殊法人等の、行政機関以外の行政主体を中心に、権限と責任の明確化の観点から、行政の関与の仕方についてさらなる検討を進める予定である。

    宮内義彦 行政改革委員会規制緩和小委員会座長

    規制緩和小委員会は、運輸分野の需給調整規制の廃止など、民間の自由な経済活動の阻害要因となっていた行政の関与を除外すべく取り組んできた。今年12月の任期終了を控え、骨太の最終報告を取りまとめるべく検討を進めているが、今後とも不断に規制緩和を進める必要があり、新たな体制の整備が必要である。
    規制緩和により、行政の役割は、事前のルール制定と市場の監視に限定されることから、行政のスリム化が期待される。しかし依然として官の経済活動は多く、民間の守備範囲の一層の拡大が必要である。

    轉法輪奏 行政改革委員会官民活動分担小委員会座長

    官民活動分担小委員会が昨年取りまとめた「基準」の原則は、
    • 官の関与は最小限に止め、民間の活動を優先する、
    • 行政活動の効率化を図る、
    • 行政による説明責任の遂行と透明性を確保する、
    の3点である。今年は、特に特殊法人等の活動を類型化して制度設計を検討し、7月中旬には中間報告を公表する予定である。
    また、財投改革なくして財政改革や行政改革は実現しない。資金運用部審議会懇談会をはじめ各方面で検討が進められているが、行政改革会議のイニシアティブ発揮をお願いしたい。

    今井敬 経団連副会長・行政改革推進委員長

    経団連は、行政改革会議、行政改革委員会の活動を全面的に支援している。
    行政改革の第1の目的は、簡素で効率的な政府の実現である。現在、行政改革会議の議論は、組織論に集中しているようだが、まず行政改革委員会の「基準」を活用して行政のスリム化を図られたい。
    エージェンシーについては、既存の特殊法人との違いを明確に示す必要がある。併せて、定期的な見直し等、肥大化防止策が必要である。
    財投改革については、経団連でも「入口」「中間」「出口」の分断、郵貯・簡保の特殊会社化、財投機関債の発行など財投機関自身による資金調達を提案しているが、行政改革会議でもぜひ検討願いたい。

    橋本徹 経団連評議員会副議長・金融制度委員会共同委員長

    民間の自由で創造的な活動を促すためには、行政のスリム化が不可欠であり、行政改革は経済の活性化に向けた最重要課題である。
    特に財投改革、中でも公的金融の改革は、日本版ビッグバンの実現に不可欠であり、「入口」である郵貯の改革は、今次行政改革の試金石である。行政改革会議が、財投改革の中心的役割を果たすことを期待するとともに、行政改革委員会には任期の延長を含め、その実現状況の監視を願いたい。
    改革にあたっては、郵貯の資金運用部への預託義務の廃止や政府系金融機関が市場から独自に資金を調達する手段の導入等を進めるとともに、行政改革委員会の「基準」を活用し、民営化を含め郵貯と政府系金融機関の業務を見直す必要がある。

    水野 行政会革会議事務局長

    中央省庁再編の基本は、省庁を大くくりにして縦割りの弊害を是正することである。イメージとしては、例えば、司法、財政、外交、防衛、警察の5機能と、産業の振興、公共事業、国民福祉、教育・科学・文化という9つが考えられる。また、官邸機能強化の観点から、内閣官房5室に危機管理の機関を加えるとともに、総理府や総務庁の主要な機能を合わせ持った「内閣府」あるいは「総理府」が必要になるのではないか。
    併せて、行政のスリム化を図る観点から、私見ではあるが、例えば印刷、造幣、登記、特許、車検、航空管制等の現業あるいはそれに近い部門については、エージェンシー化してはどうかと考えている。また、肥大化防止策としては、各エージェンシーの設置法案を3〜5年の時限立法とすることや、外部監査の導入等が考えられる。

    宮崎 行政改革委員会委員長代理

    規制緩和は万能ではないが、一層の推進が必要であり、社会的規制についても時代の変化にあわせて見直していく必要がある。ただし、行政改革委員会の終了後、別の角度から新機関の設置を検討することは構わないが、委員会の任期延長は考えていない。
    官民の活動分担については、組織や人員よりも、理念に関する議論が先行すべきであり、その結果として行政のスリム化に通じることになろう。既存の組織の看板の塗り替えや、人員の再配置はスリム化ではない。 行政会革の実現のためには、併せて、立法の改革をはじめ、地方の規制や民民規制の見直し、そして税制や補給金など関連する経済政策の見直し等も不可欠である。


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