経団連くりっぷ No.59 (1997年 7月10日)

日本イラン経済委員会総会(委員長 相川賢太郎氏)/7月1日

8月のハタミ新政権誕生に注目
−日本イラン経済委員会総会を開催


日本イラン経済委員会は、7月1日、1997年度定時総会を開催し、1996年度事業報告・収支決算および1997年度事業計画・収支予算を原案通り可決した。当日は審議に先立ち、外務省中近東アフリカ局の宮家<みやけ>中近東第二課長を招き、大統領選挙後のイラン情勢と中東情勢について幅広く説明を受けた。以下は宮家課長説明の概要である。

  1. わが国の中東政策
  2. わが国は中東に原油の大半を依存している。また原油埋蔵量からみて、今後も、しばらくの間は、この傾向は変わらない。つまりわが国にとって中東は、朝鮮半島に次ぐ安全保障上の注意を払う価値のある地域である。日本としては、この地域の平和と安定に貢献していく必要があり、その基盤には、良好な二国間関係の構築がある。

    歴史的に見て、湾岸では、英国の撤退後の空白をイランのシャーが埋めたが、79年のイラン革命後はイラクのサダム・フセインが新たに生まれた空白を埋めようとしてイラン・イラク戦争を始めた。その後は、湾岸地域に展開する米軍がこの空白を埋めている。日本政府は、米国との良好な関係を維持するだけでなく、湾岸のすべての国と良好な二国間関係を維持しようとしている。

    特にイランは地域の大国であり、国際的にはいろいろな疑惑はかけられているものの、同国に対しては、孤立化政策よりも、対話路線を継続することが必要と考えている。

  3. イランに対する疑惑と大統領選挙後の期待
  4. イランは、国際社会から、中東和平プロセスの妨害、国際テロへの関与、核および大量破壊兵器の開発等で疑惑を持たれている。5月23日に実施された大統領選挙後は、国内の勢力争いの行方に関心の集まる所であるが、率直に言ってイラン政府関係者は、ハタミ師の当選を予測していなかったようだ。つまりイラン国民の、イスラム革命の意義は認めるが、もうすこし窮屈ではない生活がしたいという声の大きさを正しく認識できていなかったと思われる。今後は、8月に誕生する新政権の構成等を注視していく必要があるが、文化、社会政策を中心に、イラン国内で穏やかな変化が始まることもあり得る。しかし、イランの対外政策については、8月のハタミ政権発足後も、直ちに急激な変化が起こるとは考えられない。

    米国は大統領選挙の結果自体は好ましいものとしているものの、サウジにおける米軍住宅の爆破事件が未解決でもあり、その捜査結果次第では、(たとえイランが好ましい方向に変化していったとしても)対イラン措置を強化する方向に動くこともあり得る。米国が態度を硬化すれば、イラン国内の教条主義者に対しタマを与えることになるので、両国の関係は改善しないだろう。

    イランを巡る環境が改善する可能性については、変数が多く、現時点で判断することは難しい。


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