経団連くりっぷ No.60 (1997年 7月24日)

経団連提言/7月22日

情報化の推進に関する提言
−構造改革のツールとして− をとりまとめ


情報通信委員会(委員長:藤井義弘氏)では、96年秋より情報化部会(部会長:礒山隆夫東京海上火災保険専務取締役)を設け、情報化の推進策について検討し、「情報化の推進に関する提言−構造改革のツールとして−」をとりまとめ、22日の理事会の了承を経て、政府等関係方面に建議した。以下にそのポイントを紹介する。

「情報化の推進に関する提言−構造改革のツールとして−」のポイント

  1. 基本的な考え方

    1. 構造改革のツールとして情報化を活用する必要がある
    2. 企業は自らの構造改革のため情報化を速やかに進めなければならない
    3. 企業は、既存の枠組みを越えて産業情報化の環境整備に積極的に参画し、迅速な実現を促す必要がある
    4. 行政改革の推進や、企業の情報化の制約を除去する観点から行政の情報化を急ぐべきである
    5. 情報化の飛躍的な進展を促すため、総合的・一体的な情報化行政を実現すべきである
      情報化の飛躍的な進展のためには、政治のリーダーシップと政府の総合的・一体的な推進体制が不可欠であり、副総理格の特命事項担当大臣や専門事務局の設置を提言。

  2. 情報化行政に関する5つの視点
    1. 民間による創意工夫の発揮
      規制は極力排除し、民間による創意工夫や技術革新を促すべき。

    2. 技術革新の成果のタイムリーな活用
      制度・ルールは技術革新の成果を柔軟に反映できるものにすべき。

    3. 透明で簡素・効率的な行政の確立
      産業情報化に関する施策は、民間の競争原理の最大限の活用を前提とすべき。
      また公的分野も含め、情報化のスケジュールや投資効果を国民に明示すべき。

    4. 広く国民、企業が安心して利用可能な条件の整備
      利用者の視点に立って、制度・ルールづくりや環境整備を行なうべき。
      自己責任原則の啓蒙を含む消費者保護策やプライバシー保護、セキュリティ対策を講ずるべき。

    5. 国際的整合性の確保
      制度・ルールや技術・システムの国際的整合性の確保が重要。

  3. 情報化推進のための具体的課題
    1. 産業の情報化のための環境整備
      1. 情報化に対応した制度・ルールづくり
        1. 保存義務付書類の電子化
        2. 書面や対面を前提とした制度・ルールの見直し等

      2. 電子商取引に関する環境の整備
        1. 電子商取引の制度的枠組みに関する基本的考え方(「原則自由」と民間の積極的取組みの尊重、自己責任原則の重視、政府の総合的な推進体制の整備)
        2. 電子商取引をめぐる制度・ルールの整備
        3. 多様な電子認証・公証サービスの提供
        4. EDI(受発注・決済データの電子化・共通化)の推進
        5. 電子マネー導入のための環境整備等

      3. 低廉で使いやすい情報通信インフラの整備、コンテンツ拡充のための基盤の整備、減価償却制度の拡充等

    2. 公的分野の情報化の推進
      行政改革のツールとして行政の情報化を急ぐべきとの観点から、
      1. 行政プロセスの電子化
      2. 行政手続き・行政サービスの電子化(電子申請・申告の導入、歳出・歳入事務処理の電子化、行政情報のデータベース化、行政EDIの推進、行政サービスの電子化など)
      3. 地方公共団体の情報化、民間へのアウトソーシングの推進、公的分野の情報化の計画的かつ総合的な推進などを提言。
      *行政の情報化の遅れによる事務処理負担の例
      歳入・歳出金の口座振替業務に伴う金融機関の作業量(データ入力等)
      歳入金・歳出金の口座振替を行なうためには、各省庁から紙ベースで送られてきた書類を金融機関で仕分けし、手作業でデータ入力を行なう必要がある。そのため、データの入力等のために費やされる時間はおもなものだけでも年間96万5千時間にのぼる。その他、集計、確認、送付といった作業がこれに加わり、書類の搬送コスト、保管コストを含めると、情報化の遅れに伴う負担はさらに重くなっている。

    3. コンピュータ・リテラシー、情報リテラシーの向上
      国民の幅広い層が情報機器を使いこなす能力を身につけるとともに、有用な情報を選びとり、さらに付加価値をつけて発信することができる情報リテラシーの向上を図るべき。
      そのため、(1)教育界の取組み(既存のカリキュラムの見直し、インターネットの活用、企業人の活用、産業界との交流推進等も提言)と、(2)企業の取組み(役員の情報化研修の推進、従業員教育の充実や硬直的な社内制度の見直し等)を提言。

      ※リテラシー(literacy):読み書き能力、教養。

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