経団連くりっぷ No.71 (1998年1月22日)

なびげーたー

新たな段階に入った温暖化対策

参与 太田 元


昨年12月の京都会議で日本は厳しい削減目標が課せられた。産業界としては企業の創意工夫が生かされる温暖化対策の実現に向けて努力する必要がある。

京都会議(COP3)は2010年頃までに温室効果ガスを、日本 6%、アメリカ 7%、EU 8%削減することで合意し、今後、これらの目標に沿って各国で対策が進められるという新たな段階に入った。

上記合意は、削減対象としてCO2等の3ガスに、代替フロン3ガスが加わり、かつ森林の吸収分の考慮、排出権取引、共同実施、クリーン開発メカニズム等、細目が今後決まるため、評価は難しいが厳しい目標である。しかも、高いエネルギー効率を実現しているわが国の努力があまり評価されなかったことは残念である。

政府は、すでに対策推進本部を開催し、省エネ法の改正、経団連の環境自主行動計画のフォローアップ、研究開発の推進等を決定した。

省エネ法改正は、

  1. トップランナー方式の導入による自動車、電気製品等のエネルギー効率の改善、
  2. 工場、事業場毎の合理的なエネルギー使用の推進、
を目指している。企業の技術や知識が最大限生かされるよう働きかける必要がある。

経団連が昨年6月とりまとめた自主行動計画も、効果的な手法として温暖化対策に位置づけられている。計画では産業部内からのCO2排出量を2010年までに1990年レベル以下にするという目標を掲げ、毎年レビューを行ない、結果を公表する旨を明らかにしてきた。これに対し、政府はこの計画の実効を確実にするためフォローアップを行なうことを決めたものである。

経団連はCOP3の会期中、10カ国の経済団体を集めて自主的取組みを紹介するフォーラムを開催した。辻副会長は、その成果を踏まえてCOP3の本会議場で、各国代表に対し、自主行動は放任主義ではなく、具体的な対策と改善の責務を伴うこと、審査が必要なこともあり得る、とした上で、これを効果的な対策として位置づけるよう訴えたCOP3本会議における辻副会長のステートメント参照。経団連としても、環境自主行動計画の着実な実施と将来の見通し等が外部に説明できるようにすることが重要であり、そのためにもレビューの進め方を早急にとりまとめることとしている。

政府部内には、温室効果ガスの排出量(エネルギーの使用量)を事業所毎に都道府県に報告させるとともに、強制的な割当てによる削減を狙った統制色の濃い法案提出を急ぐ動きがある。

21世紀は環境の世紀であり、省資源・省エネ型の循環型社会に向けた努力が不可避であるが、どういう方法で実現すべきか産業界としても検討する必要があろう。


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