経団連くりっぷ No.73 (1998年2月26日)

電子商取引に関するセミナー(司会 礒山隆夫情報通信委員会情報化部会長)/2月17日

電子商取引に関する政府の取組みを聞く


経団連は、昨年7月にとりまとめた「情報化に関する提言−構造改革のツールとして−」の中で、政府が一体となって電子商取引の環境整備に取り組むよう要請した。2月17日には標記セミナーを開催し、関係省庁(内閣内政審議室、法務省、大蔵省、通商産業省、郵政省、建設省)より、電子商取引に関する取組状況と今後の方針について説明を受けるとともに懇談した。

  1. 大澤内閣官房内閣審議官
  2. 「高度情報通信社会推進本部電子商取引等検討部会」の概要

    政府の「高度情報通信社会推進本部」の本部長である橋本総理の決定により、97年9月、「電子商取引等検討部会」が設置された。その背景として、
    1. 電子商取引等をめぐる国際的な議論が高まりつつあること、
    2. 推進本部と同有識者会議の合同会議において省庁横断的な検討を求める意見が出されたこと、
    等があげられる。検討部会の目的は、政府全体としての取組みのあり方を決定するとともに、あらゆる省庁に電子商取引の重要性を認識してもらい、取組みを促進することにある。
    検討事項としては、
    1. 現行制度・ルールの明確化、整備等を必要とする課題(民法・商法・民事訴訟法等、知的所有権制度、違法有害コンテンツ対策等)、
    2. 新たな対応のあり方等を検討すべき課題(認証等)、
    3. 国際調和を一層図るべき課題(標準化、グローバルスタンダード等)、
    4. 国民生活上の課題(消費者保護、プライバシー保護)、
    5. 政府として前向きに取り組むべき課題(通信インフラ整備、公的調達等の電子化、情報リテラシーの向上、研究開発等)、
    があげられている。本年5月を目途に報告書をとりまとめることにしている。

  3. 原田法務省民事局第四課長
  4. 電子取引法制にのあり方等に関する検討状況

    法務省では、96年7月、民事局長の主宰する「電子取引法制に関する研究会」を発足させ、制度問題(認証、電子署名等)や実体法(民法、商法、民事訴訟法等)について検討している。
    法務省が所管する商業登記制度は、通常の取引において、会社の存在や代表者等の確認の際に、高い信頼性を得て活用されている。電子取引においても商業登記情報を活用することは、電子認証への信頼性を高めるうえで効果がある。電子認証は、法務局(商業登記所)が独占的に行なう必要はないと考えている。また、併せて契約日付、契約内容等を確認する電子公証について検討を行なっており、4月以降システム開発、実証実験を行なうことにしている。
    さらに、電子署名に法的効力を与え、そのための要件などを内容とする電子署名法(仮称)制定の要否の検討も行なっている。近く検討成果を公表する予定である。

  5. 木下大蔵省銀行局調査課長
  6. 「電子マネー及び電子決済の環境整備に向けた懇談会」の中間論点整理

    昨年10月、金融制度調査会の下部組織として標記懇談会が発足し、本年1月に中間的論点整理をとりまとめた。そこでは、電子的な金融・決済サービスについて、今後さらなる発展が見込まれ、既存の制度の延長線で捉えることが困難であることから、新たな立法措置を含む環境整備を図る必要があるとしている。今後、
    1. 消費者保護、利用者保護のあり方、
    2. 電子マネー発行体の適格性要件、
    3. 電子マネー発行体の破綻時の対応、
    4. 不正使用・不正行為の防止、
    等について検討し、連休明けを目途に検討結果を整理し、法案作成を進めることにしている。

  7. 芳川通商産業省機械情報産業局情報政策企画室長
  8. 電子商取引を巡る政策の現状と将来の課題

    通産省では、95年度以降、400億円近くの補正予算を計上し、電子商取引の実証実験として61プロジェクトを推進している。民間企業で構成するECOM(電子商取引実証推進協議会)が各種ガイドラインや実験成果を公表しており、その成果は諸外国からも注目されている。また、制度問題については、「電子商取引環境整備研究会」が昨年末に第2回目の中間論点整理を行なっている。今後の課題は、制度・ルールの検討と具体化、電子商取引の実用化、技術フロンティアの拡大(暗号等)である。

  9. 関郵政省通信政策局政策課調査官
  10. 電子商取引等の推進に向けた取組み

    郵政省は情報通信の利用の一形態として電子商取引をとらえている。郵政省の電子商取引のための環境整備の一環として、昨年5月にネットワーク認証業務に関するガイドラインを策定した。ネットワーク自体の安全・信頼性確保も重要であり、昨年7月に情報通信ネットワークの安全・信頼性基準を改正した。不正アクセスの規制、処罰のための法制度整備、ならびに違法・有害コンテンツをネットワークから排除できるような仕組み、民間部門の個人情報保護のあり方等についても議論すべきと考えている。
    さらに次世代インターネットの開発(電子マネー伝送技術の開発、超高速・大容量化、高信頼化、コンテント保護)、インターネットへの市内通話料金でのアクセスの早期全国化等により、ネットワークの整備を図っている。

  11. 木下建設省大臣官房建設技術調整官
  12. 建設CALS等公共事業の情報化への取組み

    建設省では、(1)公共事業のコスト縮減と品質の確保・向上への要請、(2)民間の電子商取引の牽引役としての公共事業の役割等から、公共事業の情報化(CALS/EC)の推進に取り組んでいる。95年5月には「公共事業支援統合情報システム研究会」を設置し、96年4月に整備基本構想、97年6月に建設省直轄事業に関するアクションプログラムを策定した。2010年までにすべての公共事業にCALSを普及させることを目指し、各種実証実験や技術開発などを行なっている。
    また、建設省が保有する道路網、河川、下水道等を利用して光ファイバー網を整備している。


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