首都機能移転推進委員会(委員長 河野俊二氏)/4月10日
首都機能移転については、さる1月、国会等移転審議会が北東、東海、三重・畿央の3地域を調査対象に設定するなど、新たな局面を迎えている。今後、国会等移転審議会では、さらに移転先候補地の選定に向けた作業を進めていくが、最終的な移転先決定に際しては、東京都との比較考量が行なわれる。
もとより、東京圏の再整備は、首都機能移転の是非を問わず、喫緊の課題である。脆弱な都市防災、交通混雑、ゴミ処理、住宅問題などの解決は、経済界としても真剣に取り組まねばならない課題である。
そこで、首都機能移転推進委員会では、交通工学の専門家であり、国会等移転審議会の調査部会専門委員である森地茂東京大学工学部教授を招き、「東京圏の再整備と新首都の建設について」というテーマで説明を聞くとともに、併せて当委員会の報告書『新東京圏の創造』(案)の審議を行なった。
国土づくりの基本方針である「全国総合開発計画」(3月31日閣議決定)は、大都市のリノベーションの重要性を強調している。国際的な都市間競争の時代を迎え、東京圏の再整備は急務の課題となっている。生活環境、防災、住宅、交通など課題は多種多様であるが、その解決を図るための政策手段は社会基盤の整備が中心となろう。
東京圏を魅力ある都市として再生するため、「観光都市づくり」「防災性向上」などに取り組まねばならない。人々の生活の質の向上、日本経済に対する東京圏の牽引力の再構築を図る上で重要なのは、交通システムの改善である。以下は、3つのキープロジェクトである。
東海道ベルト地帯の交通システム
日本経済が再び3〜4%の成長軌道に乗れば、低迷している交通需要も回復し、わが国の大動脈である東海道の新幹線・高速道路、空港は確実に容量不足に陥る。第二東名高速、中央新幹線、首都圏新空港の建設を急ぐ必要がある。
環状道路の整備
環状道路の整備が決定的に遅れている。環状方向の道路整備をここまで軽視した大都市圏は、欧米、東南アジアのみならず、世界に例がない。この結果、交通、環境など面で都心部に過度の負担がかかっている。しかし、それに要する整備費は莫大であり、例えば、中央環状道路の場合、10km当たり1兆円というコストをいかに賄うかが課題となる。
都市鉄道網整備
東京圏の鉄道は、200%を超える車内混雑率、線路上の過密ダイヤ、ターミナルの混雑、開かずの踏み切りという4つの混雑を抱えている。しかし、新幹線、都市間列車・急行列車、普通列車、地下鉄、モノレール・新交通という世界に例をみないハイアラーキ構造が構築されているため、機能不全に陥らずに済んでいる。当面、都市鉄道網をさらに整備し、表定速度を向上させることが重要である。
東京圏でこうした交通インフラを利用者負担中心で整備していくと、社会基盤整備本来の目的を達成できないケースが出てくる。例えば、圏央道の料金設定を利用者負担中心とした場合、東北地方から東海地方への移動にかかる高速料金は、都心を迂回する圏央道を利用する方が高くなり、都心部の渋滞解消には寄与しない。
そもそも道路公団、首都高速道路公団、帝都高速度交通営団などは、マーケットメカニズムに基づいて交通基盤を整備し、運営しているわけでなく、重要プロジェクトについては、公的補助を前提とする財源制度に改めていく必要がある。
首都機能移転に関しては、東京からの独立性と機能併存性の両面から、60〜300kmを対象地域の基本として、適地調査が進行しつつある。その決定に際しては、少しでも自分の県に近いところでといった発想ではなく、200年後も風格のある新首都を作れるか、また、そのための適地はどこか、ということを考えることが重要である。
当委員会の下部組織である「新東京圏創造のためのワーキンググループ」(座長:國信東京電力理事)がとりまとめた報告書『新東京圏の創造』(案)について審議を行ない、了承を得た。なお、本報告書は4月21日開催の理事会の議を経て、経団連の正式な報告書としてすでに公表されている。
21世紀の東京圏の理想の姿 「安心・ゆとり」「魅力」「活力」の3つがキーワード |
安心・ゆとり、魅力、そして活力を兼ね備えた 新東京圏創造に向けて |
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1.安心・ゆとりの都市づくり
2.魅力豊かな東京圏の創造
3.活力ある東京圏の創造
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1.新東京圏創造に向けた提案と経済界の役割
2.新東京圏創造のために求められる政策
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