経団連くりっぷ No.79 (1998年5月28日)

亀井国土庁長官との懇談会(司会 古川副会長)/5月14日

信念を持った国土政策の遂行を求める


経団連では全総計画や首都機能移転の推進、東京圏の再整備、土地政策の展開など国土政策について積極的に提言している。5月14日には、亀井国土庁長官、坪井政務次官ほか国土庁幹部を招き、意見交換を行なった。経団連からは豊田会長、今井・古川・北岡各副会長、齋藤評議員会議長、大賀・前田各評議員会副議長、河野首都機能移転推進委員長、田中国土・住宅政策共同委員長、藤井情報通信委員長、近藤輸送委員会企画部会長ほかが出席した。

  1. 亀井久興国土庁長官挨拶
  2. 豊かでゆとりがあり、安心して暮らせる活力あふれる社会を創造するために、国土庁は次の4つの施策に積極的に取り組む。
    第1に「21世紀の国土像の形成に向けた取組み」である。3月31日に閣議決定した新しい全国総合開発計画『21世紀の国土のグランドデザイン』に基づき、多軸型の国土構造への転換を基本構想とし、戦略的に施策を展開する。また首都機能移転は、東京一極集中の是正、東京の良好な生活環境の回復等に大きく寄与する。私も調査対象地域を精力的に視察したい。
    第2は「土地政策の推進」である。昨年2月に閣議決定した『新総合土地政策推進要綱』において、土地政策の目標を地価抑制から土地の有効利用促進へと転換したことを踏まえ、土地の有効利用や土地取引の活性化に向けた施策の推進に取り組む。
    第3に「総合的な災害対策」、第4に「総合的な水資源対策」を推進する。また、企業が国を選ぶ時代に、地域が企業にとって魅力ある環境を備えられる施策を講じたい。

  3. 意見交換
    1. 新しい全総計画について
    2. 古川国土・住宅政策委員長は「経団連提言の狙いは、全総計画に概ね盛り込まれた」と述べた後、「(1)沖縄の振興策やむつ小川原開発の推進方策等は、基地政策やエネルギー政策等の進展を踏まえてブロック計画で明確にすべきである、(2)計画の理念を地域に定着させるべきである」と発言した。
      河出計画・調整局長は「(1)各ブロック計画は順次策定する、(2)全国各地で例えば1日国土審議会的なものの開催など積極的な広報を行なう。また、地域に計画を浸透させるための指針を策定する」と応答した。

    3. 首都機能移転の推進と東京圏の再整備
    4. 河野首都機能移転推進委員長から「(1)経団連は、4月に、首都機能移転後の東京圏の目指すべき理想の姿を描いた報告書を発表した。(2)首都機能の移転を着実に進め、東京圏の整備に取り組むことを期待する」と述べた。
      林大都市圏整備局長は「(1)首都機能移転後も東京は経済都市、文化都市として世界に通用する機能を発揮していくことが重要である。(2)移転先の検討のみならず、移転の意義と効果についても国民の議論を深めていく」と答えた。

    5. 土地政策の展開、工場等制限法の是正
    6. 田中国土・住宅政策共同委員長は「(1)土地の有効利用に向けた施策の自治体への早期徹底を図るべきである、(2)工場等制限法の制限区域の大幅縮小、基準面積の引き上げを行なうべきである」と発言した。
      生田土地局長は「自治体との意思疎通に努める。また国土利用計画法の改正も法律の公布から施行までの3カ月間に自治体に徹底したい」と述べ、林大都市圏整備局長は「工場等制限法を廃止せよとの声もあるが、枠組みは維持しつつ問題解決型の取組みを考えている」と発言した。

    7. むつ小川原開発の推進
    8. 前田国土・住宅政策委員長代行が「(1)将来のエネルギー・環境問題の解決に向け、むつ小川原開発は意義を持つ、(2)国土庁にナショナルプロジェクト推進の主導的役割を求める、(3)北東公庫・開銀の合併に伴う関係者協議を亀井大臣のリーダーシップで早期に進めてほしい」と発言した。
      中川地方振興局長は「(1)現在、新しい『東北開発促進計画』を検討中であり、その中で、ただ今のエネルギー・環境問題の基地との認識を踏まえ、取扱いを検討する。(2)むつ小川原開発の推進は青森県の『むつ小川原開発基本計画』に基づいている。もはや大規模工業基地との位置付けは限界であり、青森県を中心に地域としての意志を持った具体性のある新しい計画づくりが望まれる。(3)むつ会社の債務についてはこれまで責任を持って経営指導してきた経団連が調整を図り、将来展望を示すべきである。そのために必要な条件整備については国土庁も検討する」と発言した。

    9. 坪井一宇国土政務次官総括発言
    10. 全総計画は、50年先の日本の姿が国民に分かりやすく理解できる工夫をして、教育の場でもPRする必要がある。首都機能移転問題や土地問題も、国民が広範に意見交換ができるような場を設定すべきである。

  4. 懇談
  5. 古川副会長:
    公共投資は、どういう観点から効率化を図るのか。

    河出計画・調整局長:
    「国土の均衡ある発展」のために、各地域の発展の基礎的条件の整備は国が行なう。ただし、その整備には客観的な指標を活用し、効率的に進める。

    坪井政務次官:
    投資自体の経済効果だけに着目すると都市ばかりに投資が集中する。1つの投資によってその地域がどう発展するのかを大きく捉えることが必要である。

    大賀評議員会副議長:
    首都機能移転は実現すべきだが、ブラジリアで働く人は金曜の夜にはリオデジャネイロに帰ってしまうと聞く。住む人に魅力ある街にすべきである。

    林大都市圏整備局長:
    審議会で求めている新都市像も「訪れてみたい都市」である。

    坪井政務次官:
    ダラスでは先に遊興施設ができ、若者が集まった後、住宅街などができた。日本でも従来はまず工場・研究所を誘致し、それから楽しむ場所を考えてきたが、ダラスのような逆の発想も必要である。

  6. 豊田会長挨拶
  7. わが国に求められる基本的な方向へ政策を展開するという信念は、時の情勢で揺るがせてはいけない。国土庁が21世紀の国土のグランドデザインの信念を貫き通すことを期待している。


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