経団連提言/9月14日
国土・住宅政策委員会(委員長:古川昌彦氏、共同委員長:田中順一郎氏、今村治輔氏)では、今年度から土地・住宅政策のあり方について、基本理念から議論を行なっている。今般、政府与党の来年度税制改正に向けた議論の状況、新たな経済対策づくりの動向等を踏まえ、求めるべき住宅政策について標記の提言を中間的に取りまとめ、9月14日の会長・副会長会議の了承を得て政府関係方面に建議した。以下は提言の要旨である。
国民の住宅への多様なニーズ(広さ、価格、耐久性、利便性、環境、防災機能等)
大きい経済波及効果(名目GDPの約6%を占める住宅投資)
→ 魅力ある居住空間づくりを通じた内需振興が必要
ゆとりある居住スペースの確保、省エネルギー住宅、ロングライフの住宅、高齢化・情報化に対応した高機能住宅への誘導
都心居住の推進による職住近接の活気ある都市づくり、低・未利用地の解消
働き方、家族状況に応じて、持家・借家、高層・低層、都心・郊外の住み替えを円滑にできる仕組みづくり
住宅産業における規制緩和措置の積極的活用、容積率の拡充による床面積あたりコストの削減、開発指導要綱による負担金の賦課などの過剰な規制の緩和
ローン負担を軽減する仕組みづくり
所得税の制度改革の中での「ローン利子の所得控除制度」の導入
長期にわたるローン負担に対する不安感を緩和するためには、ローンの全返済期間にわたる居住用財産(住宅・敷地)に関するローン利子の所得控除制度(対象:所得税、住民税)を導入することが効果的であり、所得税の制度改革の中で実現されるべきである。
内需拡大に資する政策減税としての「現行住宅取得促進税制」の拡充
ローン残高に応じて税額控除を行なう現行の住宅取得促進税制は、持家取得者の大宗を占める中堅所得者層の根強い住宅需要を支える政策税制として、大きな効果をあげている。当面の重要課題である内需拡大の観点からは、まずは潜在需要の大きい中堅所得者層に対して効果的な住宅取得促進税制を、期間を限定した上で、思い切って拡充すべきである(減税対象期間を現行の「取得時から6年間」から例えば「10年間」に拡大、住民税にも適用、対象を敷地部分に拡大、所得制限を撤廃、2軒目の取得にも適用)。
流通・保有に係る租税コストの大幅軽減
住み替えの促進に資する税制の確立
都市機能更新に資する税制の拡充
都市機能の更新に資する規制の緩和・合理化
職住近接の都市づくり、都心居住を実現するためには、容積率規制を抜本的に見直す必要があるが、まずは、地方自治体が「高層住居誘導地区」を積極的に指定するなど、国が土地政策の目標を「地価抑制から土地の有効利用へ」と転換した趣旨を速やかに反映することが必要である。また「工業(場)等制限法」の抜本的見直し、「機能更新型高度利用地区」制度の活用等も必要である。地方自治体の開発指導要綱の見直しも徹底すべきである。
借家供給の促進
定期借家権制度の導入、定期借地権の活用、セカンドハウスの供給促進等により、ファミリー向けの借家など、質の高い、多様なライフスタイルに対応できる借家の供給を推進すべきである。
住宅の質の向上に資する性能規定化の早期実施
建設業の許可区分見直しによる建築工程の改善を進めるほか、住宅性能評価制度の確立等により、高い性能を持つ住宅を取得することにインセンティブを持たせることが必要である。また、ゆとりある住まいづくりを進めるべく、マンション等における機械室等の容積率算定面積からの除外等、規制の一層の緩和・合理化を行なうべきである。
居住環境の改善に資する都市基盤の整備
都市計画道路など都市基盤の整備を進めるとともに、交通機関のバリアフリー化など、ユニバーサル・デザインのまちづくりを進めるべきである。
良質な住宅を取得しやすい環境づくり
住宅金融公庫を中心とする融資制度にとどまらない幅広い施策メニューを用意すべく、民間の長期住宅ローンや保険制度の改善、リバース・モーゲージの活用等を促進すべきである。
都市政策、土地政策との連携
都市政策、土地政策と緊密な連携のもとに住宅政策を再構築すべきであり、その一環として住宅建設計画法を抜本的に見直し、『住宅建設五箇年計画』を総合性、実効性あるものに改めるべきである。