経団連くりっぷ No.86 (1998年9月24日)

国際協力委員会(司会 日枝共同委員長)/9月10日

国際文化協力への特化でアイデンティティーを確立したトヨタ財団


国際協力委員会では、国際文化交流部会(部会長:高橋 平 大日本印刷専務取締役)が取りまとめた「国際文化交流活動の意義、これまでの成果と今後の取り組み」と題する報告書案の審議を行ない、これを承認した(報告書の骨子を本紙10ページに掲載)。また、審議に先立ち、香西共同委員長が最近の委員会および各部会の活動について説明し、その後、トヨタ財団の黒川常務理事・事務局長と牧田国際助成部門プログラム・オフィサーから、同財団の活動とそのコンセプトについて説明を聞いた。

  1. トヨタ財団の国際活動とそのコンセプト
    1. トヨタ財団は1974年に設立された。昨年、基金の積みましを行ない、資産総額は214億円となった。スタッフは約20名いるが、その中にプログラム・オフィサーという専門職をおいている点が特色である。当財団の国際活動は、ほぼ9割が東南アジアを対象としており、

      1. 研究助成を中心とする国際助成活動、
      2. 「隣人をよく知ろう」という東南アジア・南アジアと日本の間での文学書等の相互翻訳・出版促進助成活動、
      3. 東南アジア研究地域交流プログラム、
      4. 上記の公募型事業になじまない案件への助成活動、
      等を行なっている。

    2. われわれは、交流というよりも協力という考え方で国際活動を実施しており、対象分野が文化であることから、自らの活動を文化分野での国際協力、すなわち「国際文化協力」と位置づけている。ただ、経済協力を中心とする現在の国際協力の枠組みの中では、文化はいまだ扱いにくい分野のひとつである。それゆえに、国際文化協力に活動を特化し、対象地域を絞って活動してきたことが、財団のアイデンティティーの確立に寄与したと考える。また、「隣人をよく知ろう」プログラムでは、アジア地域での多角的交流(multilateral exchange)を行なっている点が特徴である。いずれにしても、こうした活動は、実施していく中で現在の形になってきたわけであり、プロジェクトやプログラムの実施を通じてわれわれ自身も学んでいくという考え方で行なっていくのが良い。

  2. 質疑応答
  3. 経団連側:
    プロジェクトの評価はどのように行なっているか。
    トヨタ財団側:
    客観的な評価というものはなかなか難しい。目標に対して成果がどの程度あがったかという観点からの評価が主になる。第3者のみによる評価よりも、やはり当事者が評価のプロセスに加わる方が良い。

    経団連側:
    対象地域を東南アジアに絞っているのはなぜか。
    トヨタ財団側:
    最大の理由は、リソース(人的資源)が限られているからである。しかし、東南アジアに絞ったことで、結果としては良かったと考えている。

くりっぷ No.86 目次日本語のホームページ