経団連くりっぷ No.87 (1998年10月8日)

経団連提言/9月17日

「確定拠出型企業年金制度の導入を求める」を提言


財政制度委員会(委員長:伊藤助成氏、共同委員長:福原義春氏)では、政府・自民党等、各方面で導入に向けた議論がなされつつある確定拠出型企業年金制度について、その基本的な枠組みを検討し、考え方をとりまとめた。本提言は、9月14日の会長・副会長会議の了承を得て、関係各方面へ建議した。以下はその要旨である。


「確定拠出型企業年金制度の導入を求める」(要旨)
〜多様な設計を認め魅力ある制度に〜

1998年9月17日
(社)経済団体連合会

  1. 確定拠出型企業年金制度導入の必要性
    1. ライフスタイルの多様化への対応
      退職後所得の確保のあり方について、多様な選択肢を用意し、多様化したライフスタイルに対応できるようにする必要がある。

    2. 雇用形態の多様化への対応
      雇用形態の多様化、流動化が進む中で、ポータビリティの確保が必要となっている。

    3. 退職一時金、企業年金を取り巻く厳しい状況
      退職一時金は、原資が外部拠出されていないこと、退職給与引当金の損金算入枠が縮減されることなどから、年金に移行せざるを得ない状況にある。また、既存の企業年金には確定給付型しかないため、運用利回り、産業構造等経済情勢の変化に伴い、給付水準の見直し、企業の追加拠出を余儀なくされており、企業にとっても従業員にとっても不安定な制度となっている。

    4. 公的年金改革の方向
      公的年金の保険料負担の抑制と給付水準の見直しは避けられない。公的年金と私的年金の組み合わせによる退職後所得の確保が必要となる。

  2. 確定拠出型企業年金制度の導入に当たっての基本的な考え方
    1. 包括的な制度の導入
      確定拠出型企業年金は多様な制度設計が可能である。所管省庁別、既存の企業年金制度別に制度が分立するようなことがあってはならない。ポータビリティを確保するためにも、あらゆる形態の確定拠出型を包括する一つの制度として導入すべきである。

    2. 労使合意に基づく自由な制度設計
      企業の経営戦略や従業員の希望によって制度の選択が可能となるよう、労使合意に基づき、可能な限り自由な制度設計を認めるべきである。

    3. 税制上の支援策
      公的年金の給付水準の見直しが避けられない中、自助努力を促し、企業年金の充実を図るため、受給時まで課税を繰り延べる等支援策が不可欠である。

  3. 確定拠出型企業年金制度の基本的枠組み(概要)
    1. 拠出方法
      事業主、従業員の拠出額、拠出割合は自由に設定できるものとする。また、退職一時金や既存の企業年金からの原資の移行を認める。

    2. 「従業員勘定(仮称)」、「個人勘定(仮称)」の設置
      個々の従業員毎に管理される「従業員勘定(仮称)」を設ける。また、従業員勘定の資産の転職時の一時的受け皿等として「個人勘定(仮称)」を設け、ポータビリティを確保する。

    3. 受給権の賦与
      従業員拠出分の受給権は拠出時に賦与する。事業主拠出分の受給権は、運用リスクを従業員が負うことを考慮して、できる限り早期に賦与する。

    4. 従業員教育等
      事業主が責任を持って、加入員に対して、資産運用についての投資教育、情報提供を行う。

    5. 資産運用
      資産運用のリスク・リターンは従業員が負う。また、運用環境の変化に対応できるよう、従業員は運用商品・運用額を変更できる。

    6. 税制
      受給時課税を原則とする。事業主拠出分は全額損金算入とする。従業員拠出分は、上限を設けた上で、所得控除を認める。
      また、退職一時金(退職給与引当金)、既存の企業年金(適格退職年金、厚生年金基金)の原資の一部又は全部を確定拠出型企業年金へ移行する際、課税されないようにする。

以  上


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