経団連くりっぷ No.90 (1998年11月26日)

経団連提言/10月30日

緊急経済対策の具体化に向けて
−21世紀への架け橋プロジェクトの推進−
を提言


経団連では、政府の臨時経済対策策定にあたり、先に「緊急経済対策要望」を取りまとめたが、小渕首相から、公共投資を中心に経済界からより具体的な要望を出してほしい旨の要請があった。そこで、改めて標記の提言を取りまとめ、小渕首相はじめ政府、与党関係方面に建議した。下記はその概要である。


わが国経済は極めて厳しい状況にある。政府は金融システムの早期安定、税制改革、公共投資の推進などを一刻も早く実施することが必要である。
20〜30兆ともいわれるデフレギャップを埋めるためには、とりあえず真水で10兆円を上回る規模の追加的財政出動が必要である。11月には財政出動の骨格を示し、年内にも臨時国会を招集して補正予算を編成すべきである。中でも公共投資については、21世紀への架け橋となる社会資本の形成を進めながら、国民の雇用・所得に対する不安感の緩和につながるよう、下記のような方針のもとに緊急経済対策の具体化を図るべきである。

  1. 公共投資の基本方針
    1. 21世紀の日本にとって必要なプロジェクトへの重点的・効率的な投資
    2. 公共投資は、長期的に見てわが国が必要とする「21世紀への架け橋プロジェクト」に向けられるべきであり、従来の公共事業の概念にとらわれるべきではない。経済対策として補正予算に計上する事業においても、その対象を年度内で終了するものに限らず、次年度以降にまたがるプロジェクトや、単年度予算の制約により進捗が抑制されている有益なプロジェクトにも広げるべきである。

    3. 経済効果の高いプロジェクトに関わる長期計画の延長方針の転換
    4. わが国の長期的な社会資本形成の観点から、各種計画が立案されているが、これらは財政構造改革の一環として、計画期間の延長が行なわれている。
      本年8月12日に閣議了解された来年度予算編成の基本方針によれば、「財政構造改革の一環として既に措置された制度改正、計画の延長や今後のスケジュールが決まっている制度改正等」については、既定方針に従うこととなっている。これにより、高規格幹線道路、整備新幹線、原子力・核融合・宇宙開発等の大型プロジェクト、首都機能移転など21世紀に向けた経済効果の高いプロジェクトが依然として進行を抑制されている。これら計画の抑制方針を転換すべきである。

    5. 国、地方の予算配分の弾力化
    6. 現在、地方財政は逼迫しており、地方自治体は、大胆な行革を通じた財政再建に取り組む必要がある。同時に国は、直轄事業を増やし、さらに補助事業となっているものについては、当面の措置として国費による補助率を思い切って引き上げ、円滑な公共事業の執行を可能にすべきである。

    7. 民間投資を誘発し、景気に即効性が期待される事業の推進
    8. 現下の経済情勢に鑑みれば、公共投資は、民間投資を誘発し、景気に即効性が期待される事業の優先的な推進が求められる。具体的には都市、物流、情報、福祉、環境、科学技術・エネルギー、新産業・新事業等の分野へ重点的に投資すべきである。民間が事業を推進しやすい環境づくりに向けた規制緩和、PFI手法の活用なども重要である。

    9. 切れ目のない予算の執行、執行状況の開示
    10. 来年度に向けて、切れ目のない予算の執行が図られるよう、予算の繰り越しを認めるべきである。
      同時に、新たな補正予算の執行にあたっては、これまでの補正予算の執行状況を明確に示すとともに、日本経済の構造的な体質改善にどれだけつながったかを開示することが求められる。

  2. 分野別重点投資項目(例示)
  3. (略)

  4. 効果的な税制改革の即時実行
  5. (略)


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