緊急経済対策要望

1998年10月12日
(社)経済団体連合会

わが国経済は未曾有の危機にあり、3年連続のマイナス成長に陥る可能性が高い。このままでは世界経済に甚大な影響を及ぼすことになる。われわれ経済界は、経営の効率化、事業の再編、新規事業の展開により、再生への道を見出そうと懸命の努力を重ねているが、長引く金融システム不安など、国民の間に様々な不安感が蔓延し、実態経済は大きな痛手を負ってしまった。

わが国経済が直面する危機を克服し、21世紀の活力ある経済社会への道を切り拓き、産業の再活性化による雇用の拡大を図るためには、思い切った対策を打ち出し、速やかに実行に移すとともに、将来を見据えた抜本的な構造改革に着手すべきである。

われわれは、当面の緊急経済対策として、下記の通り要望する。また、抜本的な構造改革に向けての課題は、別途、経済戦略会議への提言としてとりまとめた。

今や一日も早い決断と行動が求められる。

  1. 金融システムのさらなる安定化
    1. 大規模な公的資本注入
    2. 政府系金融機関による貸し出し枠の拡大
    3. 信用保証協会による信用保証枠の拡大、中小企業発行私募債への保証、審査能力の強化
    4. 自己査定第II分類の細分化と引当ガイドラインの作成
    5. 個別金融機関における情報開示の推進

  2. 証券市場の活性化
    1. 持合い解消と自己株式取得・消却のための措置(証券等健全化機構(仮称)の創設)
    2. 証券関連税制の見直し
      1. 有価証券取引税・取引所税の即時撤廃
      2. 長期保有株式に係る譲渡益課税の軽減
      3. 配当に係る二重課税の排除
    3. 政府保有株式の消却
    4. 証券取引等監視委員会による異常な株価の値動きや風説流布等への監視強化

  3. 為替安定化のための国際的枠組みの早期構築
    1. 先進諸国とIMF等国際機関の連携強化
    2. 先進諸国政府による外国為替市場の監視強化

  4. 税制改革
    1. 法人税実効税率40%への引下げの施行前倒し
    2. 所得税・住民税減税の上積み早期実施
    3. 土地・住宅税制の見直し(1998年所得税に反映)
      1. 住宅取得促進税制の時限的大幅拡充
      2. 住宅ローン利子の所得控除制度の導入
      3. 住宅に関する登録免許税、不動産取得税、特別土地保有税の減免
    4. 連結納税制度の早期導入等事業展開を促進する税制の整備

  5. 公共投資
    1. 第2次補正予算編成の前倒し
    2. 都市・住環境の整備、物流効率化に資するインフラ整備、情報関連公共投資への集中
    3. PFIの早期導入
    4. 新東京圏創造プロジェクトへの着手

  6. 日本の未来を切り拓く産業基盤の整備
    1. 高コスト構造の是正
    2. 技術振興への取り組み

  7. 企業年金改革
    1. 特別法人税の撤廃
    2. 確定拠出型企業年金制度の導入

  8. 労働市場改革
    1. 失業保険の充実
    2. 有料職業紹介、労働者派遣の完全自由化
    3. 労働者の職業能力開発への支援
以  上

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