経団連くりっぷ No.98 (1999年3月25日)

経団連提言/3月16日

「少子化問題への具体的な取り組みを求める」を提言


わが国の少子化現象は諸外国にも例を見ないスピードで進行しており、少子化問題について、国民全体で具体的な対応策に取り組むことが求められている。そこで、経済政策委員会(委員長:櫻井孝頴 第一生命保険会長)では、政府、企業、地域・家庭が、この問題についていかに対応すべきか、具体策の検討を重ね、今般、「少子化問題への具体的な取り組みを求める」と題した提言をとりまとめた。以下は、その概要である。

「少子化問題への具体的な取り組みを求める」の概要

少子化問題に対する考え方
  • 結婚・出産は、そもそも個々人の自由な選択に委ねられるべきものだが、少子化の進行はすでに放置できない状況にある
  • 少子高齢化社会へのソフトランディングを図るために、急激な出生数の減少には歯止めをかける必要があるのではないか
  • 少子化に耐えうる制度を急ぐ一方で、「子供を産みたい人が安心して産めるような環境整備」を進めるべき
推進体制
  • 政府、企業、地域・家庭が一体となって取り組む
  • 国家プロジェクト化も含め、効果的な推進体制を整備すべき

(1) 政府の役割

  1. 保育制度の充実・見直し

    • 待機児童解消に向けた国・地方の努力
    • 保育事業に関わる規制緩和、バウチャー制度の導入など、民間活力を利用した保育サービスの向上
    • 家庭的保育、ベビーシッターの普及
    • 所轄官庁の異なる幼稚園と保育所の一層の連携

  2. 子育てへの経済的支援策

    • 税、財政、社会保障面等での経済支援策(児童手当や奨学金制度など)については、国民負担率、税制改革や年金改革など、制度全体の改革との整合性を踏まえた検討を

  3. 子育てに適した住環境づくり

    • 職住接近の都市づくり(定期借家権の導入による良質な賃貸住宅供給や建設コストの低減など)
    • 公園の整備、保育所の敷地開放

  4. その他

    • 労働の規制緩和や小規模事業への支援等による多様な雇用機会の創出
    • 国民への広報、踏み込んだ調査活動

(2) 企業の役割

  1. 経営者、職場の意識改革

    • 仕事と育児を両立する社員への理解

  2. 仕事と育児を両立させる雇用システムと効果的な制度運用

    • 中途採用の拡大、パートの活用等、多様な就業形態
    • フレックスタイム制の拡大、在宅勤務、地域限定採用等、柔軟な勤務体系
    • 育児のための勤務時間短縮措置、育児時間制度の導入
    • 育児休業中の社員への情報提供、復帰支援策

  3. 公平かつ正当な人事評価制度・処遇

    • 育児が不利にならない制度、男女平等の評価・処遇

  4. 家事・育児負担を軽減する商品・サービスの提供

(3) 地域・家庭の役割

  1. 父親の家事・育児参加

    • 男女の役割分担見直し、家庭における男女共同参画

  2. 地域における子育てネットワーク

    • 育児サークルやインターネットを活用した情報提供
    • 老人ホームと幼稚園・保育所の交流、地域活動に地元の高齢者が参画する仕組み
    • 公園の整備、保育所の地域開放


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