経団連くりっぷ No.103 (1999年6月10日)

なびげーたー

企業組織再編手段の充実にはスピードが大切

経済本部長 角田 博


産業競争力会議での経団連の意見は決して後ろ向きではなく、企業組織再編の手段充実と税制措置を求めており、企業の積極的な活用が期待される。

M&Aというと、企業の敵対的買収という後ろ向きのイメージが強く、日本では防衛的になる傾向があったが、最近受け止め方が大きく変わりつつある。

1998年のM&Aは834件で史上最高を記録した後、99年に入ってさらに急増し、1〜4月だけで345件に達している。長期不況が続く中、M&Aを活用した企業のリストラが本格化していることが裏付けられている。

日本経済を取り巻く環境はここ10数年の間に大きく変わりつつある。国際的なメガコンペティション、グローバル化の進展と、国内的には少子高齢化の進展に伴う潜在成長力の低下である。

こうした環境変化に合わせて、日本のあらゆるレベルでの抜本的な制度改革が求められている。国のレベルでは会計制度のグローバル化、国際的水準に合わせた税制改革、規制等行政のあり方の抜本的な見直しである。経済の複雑化と変化の加速に伴い、従来の人為的な規制では経済実態の進展に追いつけなくなっており、規制は最小限にしてできるだけ多くの部分を市場原理に任せる必要がある。

企業レベルではグループ経営の確立、特に事業の分散化、取捨選択と独立性の付与、逆にその集中的管理という各種の要請に応じられるような弾力的組織への抜本的再編が求められている。

わが国では1947年以来純粋持株会社の設立が禁止されていたが、97年に解禁され、現在純粋持ち株会社設立のための株式交換制度創設の商法改正案が国会に上程されている。法制審議会で検討が始まって1年余で具体化するという従来にないスピードで審議された。

それでも法案成立を待ちきれず、大和証券は従来の抜け殻方式という面倒な手続きを使い、連結納税制度もない中で4月から純粋持ち株会社制に移行した。ソニーなど、株式交換制度の導入を待って純粋持ち株会社を設立すべく準備を進めている企業も多く、早期立法化が求められる。

さらに、今回の産業競争力会議に向けての経団連の提言では、既存の会社を容易かつ機動的に分けることができるように、株式分割法制の創設、分社化法制の整備と、それに伴う株式、現物の出資における譲渡益課税の繰り延べ等の税制上の措置を求めている。

法人税の実効税率は今年度から40%とようやく国際水準になったが、さらに欧米にはあって日本にはないものとして、連結納税制度の早期導入、欠損金の繰り戻し還付と繰越期間の見直し、減価償却制度の見直し等の措置について、年度末の税制改正論議を待つことなく早急に検討するよう求めている。

こうした改正には膨大な作業が必要なことは分るが、何よりもスピードが求められる。


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