国土・住宅政策委員会(共同委員長 田中順一郎氏)/6月18日
国土・住宅政策委員会では、これからの都市政策のあり方について検討を進めてきたが、6月18日、委員会としてその成果を『都市再生への提言』(6頁参照)として取りまとめた。提言の取りまとめに先立ち、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の日端康雄教授を招き、環境共生都市の課題と展望について説明を聞き、懇談した。
19世紀以来、工業化、近代化、都市化を経験した先進国グループの世界は、20世紀の大量生産、大量消費を経て、文明の負の遺産としての地球規模のエネルギー問題、地球環境問題に直面している。
地球環境問題の解決に向けた方策の特性は、第1に時間がかかること、第2にGlobally think, locally actが必要であること、第3に人間は主人公ではなく環境の一要素であるという発想が必要なこと、第4に生態系を分解して考えるのではなく、総合的に捉えることが必要なことである。
1992年の地球環境サミットを契機として各国でSustainable Development(持続可能な開発)、環境共生都市づくりの必要性が広く認識されはじめた。世界全体では急速な都市化が進んでおり、21世紀前半には世界の人口の7割が都市に住むことになる。都市政策はそうした意味で、地球環境に大きな影響がある。これまで都市対策として講じられてきたのは、都市計画、土地利用政策のみであったが、環境対策が不可欠であると強調されるようになった。
日本でも、建設省が、自然との共生、環境負荷の軽減、アメニティの創出を狙いとした質の高い都市環境の形成を目標としてエコシティ(環境共生モデル都市)という考え方を打ち出し、都市環境計画を制定したモデル都市の整備に対して、補助事業、公共事業の重点的実施、税制優遇、低利融資などの都市環境施策の総合的、体系的実施を図ることとした。計画の実現に向けては、水環境の整備、緑化推進、都市美観の実現、都市交通体系の整備、省エネ・リサイクル都市システムの整備、職住近接、業務機能の適正配置などの諸施策が講じられている。
こうしたエコシティの考え方には一定の評価を与えられるが、一方で対策の対象が広がり過ぎたこと、各省の施策が縦割りであり、十分な連携が取られていないこと、事業内容が従来の開発の上乗せであり、開発基準を環境共生型に変えるような形に至らなかったこと、環境共生に関するコスト負担のあり方が不明なこと、といった問題点がある。施策の効果基準が明確でないと政策の評価にもつながらず、コストの検証がなければモデルとしての意味合いも薄い。今後、こうした課題を解決していく必要がある。
環境共生都市づくりの歴史は、100年前にイギリスで田園都市構想が出され、自然の中で共生する小都市の形成が目指された。イギリス、ドイツでは都市の膨張抑制策が取られ、こうした構想が実践された。60年代になると大都市志向が強まり、都市の拡大政策がとられた。アメリカなど土地が広大な国を中心に、都市は拡大し、フランク・ロイド・ライトやコルビジェなどは、超高層ビルを広大な緑地の中につくるといった構想を打ち出した。こうした構想において都市に取り入れられる緑は、エコロジストのいう自然とは違う人工的なものであるとの批判はあったが、大都市における環境政策としての理解を得た。
大都市においては自然の回復、物質循環の回復が課題となる。また、Transportation Demand Management(TDM)やヒートアイランド現象の抑制も重要な施策である。地方都市では周辺地域のスプロール化を防ぐことが重要である。一方で、農住混在は重要な概念であり、そのバランスが求められる。
現在、都市計画法の抜本改革に向けた作業が進められているが、私有財産の保護を強調してきたこれまでの都市計画制度には転機が訪れている。成熟社会、都市型社会では社会的規制を強調した制度を構築する必要がある。個人の権利を主張するあまり、全体の利益を犠牲にしてはいけない。また、これまで都市計画は空間的価値を増進したり守ることに役割を限定してきたが、こうした限定を取り払い、都市を活性化することが都市計画として行なわれるべきである。
新しい制度の構築にあたっては、