産業競争力の強化に関する報告会/7月19日
経団連では、総理主宰により本年3月から開催されている「産業競争力会議」において、緊急に措置すべき各種の施策を提言してきた。そこで、7月19日、これまでの経団連の取組みについて、全会員を対象に報告会を開催した。
わが国が更なる発展を遂げ、豊かな社会を維持していくためには、産業競争力の強化が不可欠である。本年1月、与謝野通産大臣との懇談会で、産業競争力の強化に関して官民合同の会議を設置することで意見が一致し、それが「産業競争力会議」の設置につながった。
「産業競争力会議」が取り組むべきテーマは大きく分けて次の3点である。第1は、供給構造の改革、高コスト構造の是正などを通じた既存産業の活性化、第2は、ベンチャー化の推進等による新産業・新事業の創出、第3は、産業技術力の強化を通じたリーディング・インダストリーの育成、である。
産業競争力を強化するためには、企業が自立・自助・自己責任の精神で主体的に取り組む一方、政府はそのための環境整備を行なうなど、官民が相互に連携をとりながら取り組んでいくことが重要である。そのような観点から、経団連としては、「産業競争力会議」において、現在のわが国経済にとって緊急に措置すべき施策を中心に具体的な提言を行なってきた。今後、「会議」では、高コスト構造の是正、産業技術力の強化によるリーディング・インダストリーの育成、人材の育成、円の国際化など、多岐にわたる課題が取りあげられる予定であるが、会員各位の意見を踏まえながら、さらに検討を深め、提言していく所存である。
政府としては、(1)金融システムの安定化、(2)需給ギャップの解消、に必要な対策を講じた後、(3)サプライサイドの改革に取り組み、平成13年度から経済を民需主導の安定成長軌道に乗せるという再生の道筋を描いている。(3)については、経済構造改革の一環として取り組んできたが、経済実態の動きの速さに各種施策が追いついていないのが現状である。この構造改革を加速化するために設けたのが「産業競争力会議」である。会合の度に総理から数多くの指示が出され、従来の行政システムでは考えられないスピードで意思決定が行なわれている。7月21日には、「産業活力再生特別措置法案」が閣議決定される予定であり、今国会で成立を図る。
同法案は、(1)事業再構築の円滑化、(2)創業および中小企業による新事業開拓の支援、(3)研究活動の活性化など、これまでの「産業競争力会議」の議論を踏まえた内容となっている。また、6月11日に決定した「緊急雇用対策及び産業競争力強化対策」には、国家産業技術戦略の策定、未来産業創出のための官民共同プロジェクトの推進など21世紀前半につながる計画が盛り込まれている。
一方、上記「対策」では、民主体で労働移動を円滑化するとの新しい考え方に基づき各種施策を打ち出しており、民間企業の取り組みに期待するところが大きい。政府としては、労働移動に対して中立的な制度を整備していく。
経済再生の主役は企業であり、この機会を捉えて、生産性の向上と更なる発展のために全力をつくしていただきたい。
わが国は少資源国であり、加工貿易によって経済発展を遂げてきた。したがって、貿易財産業が健全でなければ、国の安定成長は望めない。近年、貿易財産業の基盤が急速に弱まっており、早急にこれに歯止めをかける必要がある。以上のような考えに基づき、経団連では、「産業競争力会議」の設置を提言し、将来に向けて国策として必要な産業政策のあり方を官民一体で議論することを提案した。
第1回から第3回の「産業競争力会議」では、緊急の課題として、「供給構造の改革」と「雇用対策」が取りあげられた。経団連としては、さる5月18日に、これらの課題に対応した「わが国産業の競争力強化に向けた第1次提言」を取りまとめ、第3回「会議」(5月20日)に提出した。提言は、
「産業競争力会議」では、6月以降、第4回(6月3日)「技術開発の推進とインフラ整備のあり方」、第5回(7月5日)「中小企業の活性化、ベンチャー企業の育成など新産業・新事業創出」が討議された。
今後、「会議」が取りあげるテーマには、高コスト構造の是正、将来のリーディング・インダストリーの育成、為替の安定化などの重要課題が残されており、これらをきちんと最後まで討議しつくしていくことが重要であると考えている。
第4回(6月3日)の「産業競争力会議」で、産業技術力の強化に関して、私から、
このうち2.について、6月3日に開催された「産業競争力会議」の席上、総理から、具体的な提案を民間から出してほしいとの要請があった。そこで、経団連では、さる7月6日に、
晝間 浜松ホトニクス社長から、「人類として未知未踏の分野を発掘・開拓し、わが国独自の産業を創出することが重要」との発言があった。