社会貢献推進委員会(委員長 椎名武雄氏)/7月14日
社会貢献推進委員会では、毎年実施している「社会貢献活動実績調査」の調査内容を審議するとともに、社会貢献担当者懇談会でのこれまでの議論や今後の検討課題を報告し、意見交換を行なった。
1996年版以来3年ぶりに刊行する「社会貢献白書」(34頁参照)について以下のとおり紹介した。
本書は、毎年実施している「社会貢献活動実績調査」結果をもとに企業の社会貢献活動を網羅的に紹介した資料である。
「報告編」では、企業が組織的、体系的に社会貢献活動に取り組んだ90年代を振り返るとともに、今後の社会貢献のあり方を主に企業とNPOのパートナーシップという視点から展望している。また、「資料編」では、実績調査データを時系列で分析し、併せて経団連の社会貢献活動について紹介している。
社会貢献担当者のみならず、企業経営者や社会貢献に関心をお持ちの方々に広くご活用いただきたい。
91年より毎年実施している標記調査を以下のとおり実施することが了承された。
調査項目は、原則として前年度を踏襲するが、活動事例については特徴的な事例を2つに絞って報告いただくこととする。
調査結果は、次回の社会貢献推進委員会、1%クラブ会合で報告するとともに、要旨を広く社会に公表する。
企業が社会貢献活動を経営方針に組み込みはじめてから10年が経過し、企業も積極的に社会の課題解決に乗り出すべきとの考え方が定着してきた。また、社会貢献活動が社会の変化や市民の多様なニーズを反映させる役割を担っているということも理解されつつある。
さらに、昨今「新しい公益」の概念を形成しようという動きが顕在化する中で、企業の社会貢献活動やNPOの多様な活動が注目を集めている。「公益」は政府を通じてもたらせるものという従来の理解から、市民の社会的な利益こそが「公益」であるという点が再認識されはじめている。規制緩和、行政改革など官から民への動きは、これまで行政に委ねてきたサービスも可能な限り民間の手で、多種多様な行動を展開したいという市民のニーズを反映したものである。
これら市民の多種多様なニーズの受け手としてNPOの存在が重要となっており、その活動基盤を強化するための諸方策を早急に検討すべきである。
企業、個人を合わせた寄付金総額を日米で比較すると、日本は米国の1/25に過ぎず、とくに個人の寄付が圧倒的に少額である。「民から民への資金の流れ」を促すような政策的なサポートとして、寄付金の税制優遇対象団体の大幅な拡充や損金算入(所得控除)限度額の引き上げを行うべきである。さらに、税制優遇の認定は、独立した第3者機関が客観的基準に従って行なう透明性の高いシステムを導入したり、損金算入限度額を数年間にわたり繰り越し処理できる制度の創設など、諸外国の例を参考にしながら検討を進める必要がある。
その他、NPOで働くことを希望する企業人が出向、転職しやすい環境整備や退職後にNPOを起業しようという者に対する研修支援制度の創設等、成長分野への雇用流動化促進という観点からの施策が求められる。また、政府・企業・NPOの各セクターを資金、情報、人材面で繋ぐ「中間組織」に対する政策的な支援も重要である。
これまで当懇談会では、「企業の社会貢献活動の考え方と指針」および「企業の社会貢献活動に関する評価の視点」に関し検討を進めてきた。
前者については、これまで白書等で謳われてきたものを見直し、社会貢献活動が新たな企業価値を創造することができるかという点を含め、企業トップや広く一般にわかりやすい形で取りまとめている。後者については、欧米企業の評価システムの事例を研究し、各社が定性的に、あるいは数量的に自社の社会貢献活動を評価しうるガイドラインとして作成している。
今後は、これらと合わせて、各社の特徴的な活動事例や社会貢献をめぐる環境の変化を欧米の事例を交えて紹介する「企業の社会貢献ハンドブック」を1年を目途に作成していく予定である。
昨日、ある政治家の「21世紀にはNPOの社会的基盤を強化する必要がある。NPOを育成すべく税制改革に取り組むべきだ」との発言を聞き、漸くNPOが政治課題に取り上げられるようになったと感じた。
経団連もこの機を逸せず、税制のあり方を具体的に取りまとめ、行動を起こすべきである。その検討に際しては、米国の制度等を参考にすべきであろう。
もう一つ感じる事は、最近、社会貢献活動を経営戦略の一部として位置づける企業が増えているという点である。これは、米国の流れとも合致するが、とくに自主プログラムは、戦略的な方向へ進んでいくのではないだろうか。1%クラブもその流れにそって活動を進めていきたい。
寄付金税制については、とくに個人の税制を見直さないと民から民への資金の流れは活性化しない。NPOと協働して、積極的に働きかけていくべきである。
社会貢献もリストラの対象となっている中で活動を継続していくためには、明確な指針・考え方等を経団連が打ち出していってほしい。
今回作成した評価のガイドラインをベースに独自の評価基準を作りステークホルダーズに公表するなど、透明性の高い社会貢献活動を展開したい。